2024年10月07日( 月 )

来年4月から65歳までの雇用確保義務化

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 本誌35号(2021年4月末発刊)で、改正高年齢者雇用安定法が21年4月に施行され、事業主は65歳までの雇用確保義務に加えて、70歳までの就業機会の確保が努力義務となることをご紹介しました。来年3月で65歳までの雇用確保義務の経過措置が終了し、それ以降は、企業は希望者全員を対象に65歳までの雇用機会を確保する義務が発生します。そこで今回は、この点についておさらいしておきましょう。

 65歳までの雇用確保の義務というのは、定年を65歳にすることを義務づけるものではなく、次のいずれかの措置を講じなければいけないということです。

① 65歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入

 また、同じく来年4月1日から、雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付が縮小されます。同給付は、60歳以後の賃金が60歳時点の賃金額の75%未満となった状態で雇用を継続する高年齢者に対し、65歳に達する月まで賃金の15%を支給するものですが、これが10%に縮小され、また今後段階的に廃止されることが決まっています。

岡本弁護士
岡本弁護士

 厚労省が発表した「高年齢者雇用状況等報告書」によると、23年6月1日時点で、従業員21人以上の企業の99.9%が高年齢者雇用確保措置を実施済みであり、そのうち、定年制を廃止が3.9%、定年の引き上げは26.9%、継続雇用制度を導入した企業は69.2%(このうち経過措置適用企業は15.4%)でした。経過措置適用企業は、継続雇用制度の対象者を「希望者全員」へと改定し、雇用契約の内容や就業規則なども見直さなければいけませんが、前述の通り就業規則の改定が必要な企業は、現実には少ないものと思われます。

 ただし前述の通り、高年齢雇用継続給付が縮小されますので、同給付を考慮した賃金制度となっている場合、高年齢者の収入が減少することになります。慢性的な人手不足のなかで貴重な戦力である高年齢者のモチベーション維持のためにも、この機会に賃金制度の見直しを検討したほうが良いかもしれません。

 また、65歳までの雇用確保義務に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、次のいずれかの措置を講ずことが「努力義務」とされています(高年齢者就業確保措置)。

① 70歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 70歳までの継続雇用制度の導入
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
  a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
  b.事業主が委託、出資(資金提供)などする団体が行う社会貢献事業

 この努力義務も、将来的には「70歳までの雇用確保」として義務化される可能性があります。従って、現行制度に対応している企業であっても、今のうちに70歳雇用に向けた対策を検討・準備しておくのが望ましいでしょう。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本成史
(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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