30周年を迎え、また超えて(22)事業起こしのきっかけ(2)政治家の志に経営道をみた!
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静かなる闘志の伝播力
N会という経営者の集まりが月1回行われており、都合がつけば必ず出席するようにしている。8月の例会時のことだった。稲富修二代議士の顔を見かけた。テーブルの座席が隣同士だったのである。開始前に代議士は支援者と話し込んでいた。その光景を何気なく眺めていると、「静かなる熱量」が伝わってきた。「おや?何であろうか」と関心が高まってきた。支援者と対話する様子からは「何でも耳に入れ、解決できるものに全力投球しよう」というホスピタリティーの精神が伝わってきた。「あぁ、一皮剥けた、品格が深まったな」と率直に感じたのである。
また、「次の選挙で勝てるという自信が高まってきているから、“人格の極み”ができているのであろう」とこちらも確信するに至った次第である。早速、福岡市城南区選出の自民党市会議員たちにぶしつけな質問を投げかけた(稲富代議士の福岡2区は南区・中央区・城南区で構成されている)。
「いま解散総選挙が始まったと仮定する。現時点で鬼木代議士に稲富氏が城南区で勝てるかね?」
質問された市会議員は戸惑いを見せた。「いやぁ、自民党の同僚市議たちと意見交換したところ、現時点では稲富さんがわずかではあるが優位であるという結論です」という答えが返ってきた。「なるほど、日常活動の積み重ねのなかから培ってきた信頼・自信が深まってきたのであろう。だから“自然体のオーラ”が流れているのだな」と納得できた。
8,000票の差に号泣
思えば前回の選挙終了後に稲富氏が号泣していたさまが、くっきりと鮮明に浮かんでくる。「やれるだけのことをやった。それでも鬼木さんには8,000票の差を付けられた。一体どうしたら、この票差を詰め、さらに追い抜くことができるのであろうか」と泣き通すのである。「鬼木氏の壁厚し!」に戦意が喪失していたのである。そして、どん底のなかから3年が経過した27日の選挙で「打倒!オニキ」を果たしたのである。この政治家・稲富氏の苦闘し、勝利する方程式を解明する道程は、起業する者にも共通する。
5年の地獄
稲富代議士の経歴をたどってみよう。1970年8月、大野城市生まれ、54歳。東大法学部卒、コロンビア大学公共政策大学院修了。
大学卒業後に丸紅に入社、ここで商社のビジネスに没頭していれば、充実した人生は間違いなかったが、自ら退路を断った。松下政経塾の門を叩いて政治の世界に飛び込んだのである(サラリーマンが退社して事業を起こすことと変わらない)。ここからは苦労の連続である。
35歳から政治の道に進み、具体的には選挙に立候補(国政・知事選)したが、あえなく落選する。この苦しい時代は「自身の人生選択が間違いであったかどうか」という自問自答の繰り返しだったものと思われる。ところが神風が吹く。それは「民主党政権誕生」であった。2009年、福岡2区で初当選した。小選挙区での勝利である。39歳で待望だった代議士の道を歩み始めたのであった。ところが「我が世の春」=「民主党政権」は3年であえなく倒壊した。
そこから長く、暗い「地獄の生みの苦しみ」が始まる。17年の総選挙までの5年間、「代議士浪人」を強いられたのである。一例を紹介しよう。立憲民主党で初めて立候補し、落選した政治家Aの例である。Aは1年前から立憲民主党のある支部代表に就いていた。Aいわく「党から活動資金が50万円支給される。活動費30万円と生活費20万円に分けて使用する計画であるが、とても生活はできない。アルバイトしようと思っている」。「国会議員を志望する者がアルバイトするのはおかしいのではないか?」と投げかけた。「確かに自民党の議員志望者であれば面倒を見てくれる企業と縁のあるケースが多く、その支援も質・量ともに豊富だ。だが、野党の場合は異なり、私の周囲でもアルバイトでしのいでいる同志が数多くいる」と証言する。
このように、メンツをかなぐり捨ててでも、「代議士に復活してみせる」という不屈の精神力をもって稲富氏は5年間、耐えてきたのである。いろいろな支援者、とくに資金面でのサポーターがいたからこそ5年間、辛抱できたといえる。支援者がいたというのは稲富氏の人柄によるものであろう。そして、ようやく代議士に返り咲く機会を得られたのが17年の選挙であった。比例九州ブロックで当選。21年の選挙も比例復活で地位を守った。号泣の話はそのときのことであった。そしてこのたび、国政復帰から7年で、念願の小選挙区における勝利を手にしたのである。
強固な志、不屈の精神力、持続力、叡智力
いやぁ、自分が事業を起こすときの苦労と比較して、「稲富代議士ポスト奪還プロジェクト」で舐めた辛酸は、その100倍になるだろう。同氏が事業を立ち上げる方向を選択しておれば「35歳で事業を起こし19年、54歳で100億円規模の経営を行っている」こと間違いなし。鳴かず飛ばずの中小企業経営者の方々に告ぐ!「稲富代議士の爪の垢を“蒸して食べれば”すばらしい経営ができるであろう」。「同氏の10分の1の努力をすれば間違いなく儲けられる会社になる」と断言する。
「強固な志、不屈の精神力、持続力、叡智力」は名政治家になるための必要条件であるが、同様に経営者として成功するためにも必要である。あらためて稲富代議士の政治家としてのキャリアをまとめてみた。「俺自身はまだまだ努力と工夫が足りない」と深く反省し「策が足りない」と思い知らされたところである。筆者は政治の道には踏み込まない。苦労する割には報われない大変なものだから。
(つづく)
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