米国製造業の象徴、ボーイングの衰退(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏連続墜落事故で経営が傾くボーイング
ボーイング社は世界を代表する航空機メーカーで、「米国製造業の象徴」と言っても過言ではない。その同社に、機体の欠陥によるトラブルが相次いでいる。ボーイング737の第4世代小型民間機である「737MAX」が2018年10月にインドネシアで、19年3月にはエチオピアで相次いで墜落事故を起こし、合計で346名が死亡した。今年1月には、アラスカ航空1282便が上昇飛行中、後方左側のドアが吹き飛ぶ事故が発生し、同社製品の品質管理に疑問が投げかけられている。
アメリカ連邦航空局は一連の事態を重く受け止め、トラブル機種全機に対して運行停止を命令した。運行停止が引き金となり、受注した件がキャンセルされるなどした結果、同社の業績は急激に悪化、経営に大きな打撃を受けている。
米国を象徴する企業「ボーイング」
ボーイング社はライト兄弟が飛行機を発明した13年後の1916年、シアトルに設立された。同社は第1次世界大戦と第2次世界大戦時に米国政府から大量の飛行機の注文を受けることに成功し、大きな成長を遂げることができた。
大統領専用機である「エアフォースワン」が同社で製造されていることは有名な話で、同社は民間機の製造分野において世界シェアナンバーワンとなり、米国経済を下支えする企業となった。ところが、相次ぐトラブルで同社の信用は失墜し、その結果、5年連続の赤字を計上するなど、同社の経営は危機的状況である。
シェアを落としつつあるボーイング
航空機の製造分野は参入ハードルが高く、現在の旅客機市場は、事実上ボーイングとエアバス2社による寡占状態だといえる。ボーイングのライバルであるエアバスはボーイングの独走を阻止するため、イギリス、フランス、ドイツなどヨーロッパ勢が合弁で設立した企業である。5年くらい前まで、エアバスの時価総額は、ボーイングの半分に過ぎなかったが、その後、エアバスは大きな成長を遂げ、時価総額でボーイングを追い抜くことになった。
エアバスの工場は欧州に点在し、最終組み立て工場で航空機を完成させている。航空産業はライバルの2社が競争することで、技術的なイノベーションも起き、同市場は爆発的な成長を謳歌してきた。その結果、素材や部品産業が育成されたことはいうまでもなく、大量生産によって航空機も安くなり、「旅行の大衆化」が実現されるようになった。
ボーイング社がトラブルなどで運行停止に追い込まれるなか、エアバスはそのシェアを奪い、その結果、ボーイング社はエアバスに1位の座を明け渡すこととなった。昨年の航空機の受注台数においても、ボーイング社は1,456機、エアバスは2,319機で、エアバスがボーイングより約1.6倍多い。昨年6月に顧客納品した航空機数も、ボーイングが175機、エアバスが323機とエアバスがボーイングを圧倒している。「コロナパンデミック」が終わった後、海外旅行の需要が回復しているが、エアバスが、その需要の多くを得ているのが現状だ。
(つづく)
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