3D都市モデル・緑化および賑わい効果を見える化へ
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(株)構造計画研究所
国土交通省が主導して全国の都市のデジタルツインを実現するプロジェクト「PLATEAU」。不動産分野における新サービス創出を目指し、PLATEAUで整備された3Dモデルを活用したビジネス・ソリューションを公募したところ、6事業が選定された。選定事業は約半年で、実装に向けた検討・開発を進める。選定事業の1つである(株)構造計画研究所の「不動産敷地内のグリーンインフラ推進による、温熱環境と人流への影響の可視化」について取材した。
民間の緑化施策をシミュレーターで支援
「不動産敷地内のグリーンインフラ推進による、温熱環境と人流への影響の可視化」は、民間デベロッパー向けに提案していくことを考えている。1つは、ヒートアイランド対策や民間企業による緑化施策によって、都市の温熱環境がどのように変わるのかを、温熱環境シミュレーションにより都市スケールで評価できないかということだ。それだけではなく、歩行者の回遊行動に緑化がどれだけ寄与しているのかを評価することで、ヒートアイランド対策だけでなく、賑わい創出の効果もあれば、民間による緑化の整備がより進んでいくのではという期待がある。
(株)構造計画研究所としては、ヒートアイランド対策は、行政の都市計画分野で提案していくことだと考えているが、このソリューションにより民間にまで広がっていくものだと期待している。回遊性を熱流体と絡めて、シミュレーションやデータ解析技術を提供するソリューション開発であると考えている。ヒートアイランドのシミュレーター自体はPLATEAUのデータを取り込んで、都市スケールで行えるウェブアプリとして実装されたものがあるが、今回はそこに歩行者の位置情報を重ね、同時間帯の温熱環境と回遊性を同時に可視化できるものとして提供していく。民間デベロッパーにヒアリングを行い、どのような活用可能性があるのか、緑化を促進していく積極的な取り組みは何か、使いやすいインターフェイスの改善などを検討していく。同社では、「より民間ニーズに近づけて、1年くらいをかけて開発を進めていきたい」としている。今年度については、東京の大手デベロッパーに対してヒアリングを行い、今回の取り組みの紹介とどういったことに使えるのかなどを議論していく予定だ。
敷地内の緑被率の向上と回遊性をどのように相関、分析していくかという点が、開発の核となっている。国土交通省も、グリーンインフラの推進が不動産価値向上につながるという仮説を立てているが、今回採択された事業で数値をもってその仮説を検証していければと考えている。
検証の流れとしては、歩行者の移動実態データと、昨年度にPLATEAUを使って開発した熱流体シミュレーションシステムを重ね合わせて表示していくことに、ヒアリングの準備とともに取り組んでいるところだ。実証的に検証するエリアを決め、シミュレーションを行い、そこでの実際の位置移動データを得て、シミュレーションによる可視化を行って再度デベロッパーと2回目のヒアリングと議論をしていく計画だ。
ウェブアプリを用いたビジネス化も検討
将来的には、シミュレーション環境が構築されつつあるため、SaaSのようなかたちでの定量課金でのサービス提供や、ある程度以上のレベルの分析・考察に関しては、コンサル的に受けるサービスも検討していきたい。ポイントとしては、デベロッパーが緑化施策に対する投資対効果がわかるようになること。緑の回廊を整備されている場合、入居しているテナントに対して、回遊性がビジネスにどう影響するのかを示せるようになれば、デベロッパーがテナントに入転居を提案するなど、テナントへポジティブなアピールができるような使い方ができることを視野に入れている。また、実際に住まわれている人に対しては、緑化で涼しくなることなどが可視化できるので、居住者向けのアピールも可能になるのではないかという仮説を立てている。都心で実証的に検証していく予定だ。
今回のサービスについては、すでに基本となるプラットフォームができている状態で、それを民間デベロッパーに展開して、緑化や回遊性向上による賑わい創出を行いつつ、会社として新たなビジネスの可能性を探るというマーケティングやソリューション開発の側面が強いプロジェクトだと考えている。壁面緑化や屋上緑化の効果は実装済みだが、敷地内の植樹による日陰効果の定量化などは、これから検証していく予定だ。以前にも、歩行者移動シミュレーションを用いて都庁周辺のイベント時の人流シミュレーションを開発しているため、将来的に緑化の有無の影響で人流がどう変わっていくのか、シミュレーションができるようにしていければと考えている。
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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