米国製造業の象徴、ボーイングの衰退(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏シェアを落としつつあるボーイング(つづき)
世界の航空機市場において上記の2社以外に、もう1社中国の企業が頭角を表している。中国企業「コマック」(COMAC)である。同社は航空機製造産業において数10年ぶりにボーイングとエアバスの脅威になり得る企業である。同社はボーイングやエアバスに次ぐ世界3番目の中型航空機の商用化に成功した。昨年5月の初飛行成功以降、累積注文機数もすでに1,000機を上回っている。まだ、国際運行の承認が下りていないため、中国国内の運行にとどまっているが、ブルネイの航空会社への輸出も実現している。
エアバスにシェアを奪われつつあるボーイングは、10月23日(現地時間)第3四半期(7月~9月)の業績発表を行った。それによると売上高は178億ドル、営業損失は57億6,100万ドルを計上した。コロナ禍で工場稼働が中止していた時期の業績を除けば、最近では最悪の業績となった。
累積の赤字が続き、財務的に追い込まれているなか、同社は経営課題を解決する方法として従業員の10%に当たる1万7,000人をレイオフすることを決定した。同社の株価は年初来に比べて、半分くらいに下がり、同社の経営に対する危機感が募っている。
トラブル続発の原因は
ボーイングの危機は、品質より株価を重視するあまり、自社株買いや高額配当などの行き過ぎた株主還元を進めたことが原因だと言われている。コストを下げる経営を追求した結果、機体の欠陥などのトラブルを招き、それが運行停止、受注キャンセルにつながり同社の経営を圧迫することになった。
また、米国の場合、優秀な人材は製造業よりも金融など報酬の高い業種に集まる傾向にあり、それが米国製造業の品質低下と衰退を招いていると指摘されている。ボーイングは米国製造業の衰退を象徴する1つの事例かもしれない。
業界への影響は
今回の危機をボーイング社が乗り越えることができないと、世界の航空機市場はエアバスとコマックの2社が市場を占めることになるだろうと言われている。まだコマックは技術的にはエアバスと競争できるほどではないが、エアバス1社の独占になることを顧客である航空会社は恐れているので、そのような意味で、コマックがシェアを伸ばすことになるという。
ボーイング社が本当に危機に陥ると、ボーイング社に納品する部品メーカーの業績にも影響をおよぼし、業界が打撃を受けることになるだろう。そうなると、サプライチェーンが崩壊することはもちろん、運賃の上昇につながる恐れも高い。
航空産業は大きな発展が予想される分野ではあるが、ボーイングの「空白」が業界にどのような結果をもたらすか、注目が集まっている。エアバスは1位の座を強固にする戦略を取るだろうし、日本や韓国のように戦闘機などの製造能力がある国は、この市場にチャレンジすることになるだろう。米国と覇権争いをしている中国にとっては、航空機の製造分野に参入する絶好のチャンスなので、世界市場を取るために国を挙げて尽力するだろう。
(了)
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