3D都市モデル・建築のボリューム検証を自動化へ
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(株)くわや
国土交通省が全国の都市のデジタルツインを実現する「PLATEAU」。不動産分野における新サービス創出を目指し、PLATEAUで整備された3Dモデルを活用したビジネス・ソリューションを公募したところ、6事業が選定された。選定事業は約半年で、実装に向けた検討・開発を進める。選定事業の1つである(株)くわやの「3D都市モデルを利用した建築計画ボリューム検証出力サービス」について取材した。
敷地形状に法規制反映 建物ボリューム検証
今回の応募については、(株)くわやが主体事業者となり、PLATEAU Windows、imgee(株)でサービスの開発を行っている。今回採択されたサービスは、敷地に法規制を考慮してどのくらいの大きさの建物が建てられるのかという「ボリューム検証」を、建築の専門的な知識や技能をもたない人でもできるようにする開発提案となっている。PLATEAUの3D都市モデルの土地利用状況(≒敷地形状)や都市計画決定情報、道路形状など多様なデータを活用し、ボリューム検証を一括して自動化する。PLATEAUは、今後も全国的なデータ整備が進む予定であり、これが完成すればすべての都市で利用できるシステムになることが期待されている。3D都市モデルを活用した、建築士ではない人へ向けたアプローチによるビジネス創出の余地は、大きいと判断した。
ボリューム検証の業務は、デベロッパーなどの不動産開発事業者、敷地売買や購入の検討においては、自社内に設計部門がある場合を除いて、外部の設計事務所に委託していた。このため、社内外とのやりとりの時間や委託費用などのコストがかかっていた。今回開発するサービスを利用することで、外注しなくても自社内で確認ができるようになる。開発中のサービスは、3Dモデル上において敷地の形状を選択すると、道路斜線制限や日影規制、隣地斜線制限などの法規に則り、建築物が建てられる制限枠をフレームで画面に表示する。
今回の検証・実証実験では、「自治体ウェブサイトなどで確認作業を行っていた都市計画の確認」「地図情報から手作業としていた作図CADデータ化」「法令確認による計画可能な建物サイズの検証」を自動化する。そのシステムによる時間や費用の低減効果や、精度と実用性について検証を行い、内部検証においては建築士による法適合の確認を行い、それに要する時間の比較により有用性を検証。3D都市データを使ってボリューム検討の資料として出力ができるまでに開発を進める計画だ。
戸建にも対応 時間短縮の効果期待
今回開発するサービスは、低層住宅専用地域のような規制にも対応し、建物規模を問わない。そのため、オフィスやマンションなどの大型の建築物から、戸建住宅やアパートのような小規模な建築物の敷地開発にも利用することが可能だ。たとえば、ハウスメーカーの営業担当者が、今回のサービスを利用することで、どの程度の高さの住宅が建てられるのかを顧客に視覚的に提案する資料を、設計部門に依頼することなく自ら作成することができる。
建築士や設計事務所のような専門性をもたない社員がボリューム検討を行うメリットとしては、時間の短縮が最も大きい。社内外のやりとりの時間の短縮のほか、建築士や設計事務所の立場からも、個々の敷地の条件や法規制などを1つひとつ確認する作業を減らすことが可能となる。また、建築士や設計事務所はこのサービスを利用することで、どのくらいのボリュームの建築物が建てられるのかを迅速に示すことができ、設計の平面計画の検討に時間を割くことができる。こうした時間の短縮の結果として、コストダウンを図ることが可能になると考えている。地価が高い都心の敷地の売買・購入においては、経済的な利益も大きいことからボリューム検証に十分な費用をかけることができるが、郊外などでボリューム検討にコストがかけられないケースでも、今回のサービスを利用することで、コストをかけずに事前に建築物の規模を検討できるようになる。3D都市モデルを使うことで、建築物のボリュームを直感的に理解できる。
今回の開発の次のフェーズとしては、使いやすいサービスのUIの検討や、それぞれの都市データをどう取り込むのかなどを進めていく。将来的なサービス提供の体制としては、3Dデータを扱うため想定利用者のPC環境などを考慮して、建築士や設計事務所向けのアプリケーション対応や、最終的にはウェブベースでの提供も検討する方針だ。
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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