建設業法と下請法での代金支払時期等の規制
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売掛金の回収期間を短縮するとともに支払期間を長く確保することで、より多くのキャッシュを手元に確保することが可能になります。しかしながら、力関係に大きな差がある元請業者と下請業者との間で不当に支払いを先延ばしすると、下請業者は資金繰りに窮してしまうことになります。このような不当な取引から下請業者を守るための規制が、「建設業法」と「下請法」です。
建設業者には、建設業法のみが適用されると誤解されている人もおられるかもしれません。建設業者が、「建設工事」を他の建設業者(下請)に請け負わせる場合は、下請法ではなく、建設業法が適用されます。他方で、「建設工事」ではない取引で一定の要件に該当する場合には、下請法が適用されます。たとえば、建設業者が建設資材の販売も行っており、その建設資材の製造を下請業者に委託する場合(製造委託)や、建設業者が設計図書などの作成を請け負い、これを下請業者に委託する場合(情報成果物作成委託)などの取引には、下請法が適用されます。
下請法では、親事業者が下請事業者の給付を受領した日(役務提供の日)から60日の期間内で、できる限り短い期間内に代金の支払いをしないといけません。契約において、これより長い期間を定めた場合でも、給付を受領した日から60日を経過した日の前日が下請代金の支払期日になります。
また、下請代金を手形で支払う場合、下請法では、支払期日までに一般の金融機関で割り引くことが困難な手形を交付することは禁止されており、これまでの公正取引委員会および中小企業庁の指導基準では、手形サイトは、繊維業で90日、その他の業種で120日とされていました。しかし、今年11月1日以降、60日以内に短縮することが求められていますので、注意が必要です。
他方で、建設業法では注文者から請負代金の出来高払いまたは竣工払いを受けたとき、元請業者は支払の対象となった工事を施工した下請業者に対して、相応する下請代金を1カ月以内に支払わなければならないとされています。また、特定建設業者は、下請業者(特定建設業者または資本金額が4,000万円以上の法人を除く)からの引渡し申出日から50日以内に下請代金を支払わなければならないとされており、これは注文者から元請代金の支払いを受けたか否かに関わらず、支払いが必要です。また、支払いはできる限り現金払い(とくに労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮が必要)とし、前述の下請法と同様に、特定建設業者は、下請代金の支払を一般の金融機関による割引が困難な手形ですることは禁じられています。なお、国土交通省も、今年11月1日以降、60日を超えるサイトの手形は割引困難手形に該当する恐れがあるとして、指導の対象にすることになっています。
<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所
所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/
<プロフィール>
岡本成史(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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