食の魅力発信地へ 「シン・長浜」（後）

若い世代が流入

　ところで、長浜地区は近年、世帯数および居住人口が増加している。01年時点では921世帯、1,393人が暮らすまちだったが、23年には2,174世帯、3,282人とこの10年ほどで倍増以上の増加となっている【グラフ①】のだ。特徴的なのは、15年頃から増え始めていることで、これは14年に長浜1449号線（鮮魚市場南側の道路）が拡幅され、とくにそれにともなう街区の再開発が2丁目において行われ、マンション開発が相次いだことが影響している。合わせて、20代と30代の若い世代の人口が、福岡市全体、そして中央区全体に比べて多いことである【グラフ②】。これは、最寄り駅の赤坂駅まで徒歩10分程度、天神エリアまでも徒歩圏内という立地に新しく建設されたマンションが、若い世代を導き入れたからだとみられる。

　21年2月には隣接する港1丁目、長浜屋台街にもほど近い場所に、食品スーパー・サニーやカラオケ店・コロッケクラブなどが入る複合商業施設・キテラタウン福岡長浜がオープン。これにより買い物やレジャーの利便性がアップしたことも、長浜地区が若い世代を中心とする人たちの暮らしのニーズを満たす要因の1つになっているようだ。

    ただ、長浜地区の世帯・居住人口は今後、頭打ちになりそうだ。というのも、同地区内はほぼ開発がし尽くされており、あるとすれば一部に残った高経年マンションの建替えだろうが、今のところそのような計画は聞かれない。

　そこで、長浜地区がより発展するうえで重要になってくるのが、天神地区→北天神地区→長浜地区という人流をどうつくり出すかだ。北天神エリアでは今、「ボートレース福岡パーク化事業」（那の津1丁目、南側エリアにスケートボード施設やイベント広場、にぎわい施設などを整備）や、須崎公園（天神5丁目、福岡市民ホールの竣工が間近）の再整備事業と連携して、新たな人流を創出する仕組みが求められそうだ。

魚食普及施設「うおざ」がオープン

　11月9日の午前11時、福岡市中央卸売市場鮮魚市場（長浜鮮魚市場）の敷地東側に、魚食の普及、さらには長浜ブランドの構築・市場活力の維持を狙いとする施設「うおざ」（運営＝（株）うおざ）がオープンした。市場から提供されるさまざまな種類の刺身や焼き魚など、素材を生かした料理を楽しめる「飲食ブース」（120席）、加工品や調味料などを取りそろえた「物販ブース」などからなる。施設内には、多数のサイネージが設置されており、水産関係全般の情報のほか、市場の魚を提供する市内の店舗の情報なども紹介する。11月下旬には、個室や大広間を完備し、旬の高級魚などを使ったメニューが充実した会席場も開設される。

    オープンに先立ち行われたセレモニーでは、高島宗一郎・福岡市長が挨拶を行い、「食べ物、とくにお魚がおいしいのが福岡の魅力の1つと話す市民が多く、福岡にきたい理由としてお魚を挙げる人たちも多い状況です。魚と近年復活した長浜屋台街は二枚看板であり、長浜地区がたくさんの人たちに注目されればと考えています」と述べた。

　オープン日は、「長浜鮮魚市場 市民感謝デー」（年6回開催）、「福岡市農林水産まつり」が現地で行われ、大勢の人たちが訪れ、本マグロの解体ショーや鮮魚の販売、魚さばき方体験などといったイベントに多くの人だかりができていた。

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＜施設概要＞
所在地　：福岡市中央区長浜3-6-1
敷地面積：3,966.8ｍ²
建築面積：1,456.4ｍ²
延床面積：1,216.0ｍ²　地上1階・鉄骨造
駐車場　：79台
営業時間：11時00分～21時30分（LO20時30分）
定休日　：水曜日・年末年始

（了）

【田中直輝】