傲慢経営者列伝(13)新浪剛史経済同友会代表幹事 物議を醸す正論居士の発言(後)
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「正論居士」という言葉がある。居士とは気質を指す。言っていることは正しいが感動を誘うものが何1つない。どのようなことにでも口を出してくる「うるさ型」だ。経済界きっての「正論居士」は、サントリーホールディングス社長で、経済同友会の新浪剛史代表幹事だろう。その新浪氏の発言が物議を醸している。(文中の敬称略)
「45歳定年制」を提唱し批判が殺到
ローソン、サントリーで「プロ経営者」としての実績を上げた新浪は、経済同友会代表幹事に就いた。経済界のトップの座を射止め、「正論居士」の面目躍如だ。だが舌禍事件は就任前からあった。
21年9月に経済同友会の夏季セミナーで、新型コロナの感染拡大後の新たな成長のためには活発な人材流動が必要との考えを示し、「45歳定年制」を提唱した。すると、SNSに批判が殺到。なんと「サントリーの不買」を呼びかける人も現れ、新浪は釈明に追われた。
だが新浪は、その程度でへこたれる人物ではない。経済同友会のトップに就いてからは、「正論」に拍車がかかる。健康保険証の廃止(マイナ保険証への一体化)、児童手当の所得制限撤廃などなど。これら上から目線の発言に対し、SNSには多くの批判が寄せられた。「サントリー不買運動」というハッシュタグを付けた投稿も目立った。
ジャニー喜多川の性加害問題に言及して大炎上
世論が割れているなかで、立ち位置を明確にした新浪の発言の数々は時に炎上を引き起こした。大炎上を起こしたのは、23年9月12日、経済同友会の記者会見で、旧ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川の性加害問題に言及したこと。
東京新聞デジタル(9月20日付)は『ジャニーズ発言後に「企業を潰す」「訴えてももみ消す」不審電話、経済同友会が警視庁に相談』という見出しの記事を配信した。
〈新浪氏は12日の会見で、「児童虐待に対して真摯に反省しているか、大変疑わしい。ジャニーズ事務所を使うと、児童虐待を認めることになる」と指摘。所属タレントの起用見送りに「サントリーとして明確なスタンスを示した。タレントの方には心苦しいが、他の事務所に移るなど、手があるのではないか」と述べていた。〉
この発言後、経済同友会に不審な電話があいつぎ、「関わる企業を潰す」などの脅しもあったと報じている。
『週刊新潮』が「新浪バッシング」を連載
「新浪ショック」とも言われた居丈高なジャニーズ批判に『週刊新潮』がカチンときたらしい。ローソン時代の「パワハラ」「中国ベッタリ」「ハワイ豪華コンドミニアム私物化疑惑」など、新浪の裏の顔を明らかにしている。
告発の定番である女性問題も取り上げている。週刊新潮(23年11月15日号)は「『彼に利用された』『本当にひどい人』、サントリー新浪社長の封印された『女性秘書とのトラブル』」と題する記事を報じた。
新浪は経済同友会の代表幹事であり、また内閣府経済財政諮問会議の民間議員でもある。その発言力は際立っており、ジャニーズ問題で厳しい姿勢を見せ、「45歳定年制」をぶち上げて波紋を呼ぶなど、新浪の影響力は一企業内にとどまらない。
『新潮』は〈新浪氏に他社(ジャニーズ事務所)の不祥事に口出ししている暇があるなら、自らが歩いてきた道を今一度振り返りつつ、『人権』というものを考え直してみる必要があるのではないか〉と忠告している。
『新潮』に糾弾されても新浪は「たたかれたらへこむ。発信をやめない」と意気軒高だ。「パワハラ気質で、あだ名は“荒浪”」という指摘も納得できる。傲慢経営者ここにありだ。
(了)
【森村和男】
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