2025年01月31日( 金 )

韓国、非常戒厳の即解除を迫られたユン政権のゆくえ

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 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3日夜、「非常戒厳」を布告した。1987年の民主化後初めての事態だ。

 ユン大統領はその理由について、2022年のユン政権発足後、多数の政府官僚の弾劾訴追が発議されるなど、「国政がまひ状態にある」ことなどを挙げた。

 しかし、野党が非常戒厳に猛反発したほか、一部市民も抗議活動を展開。国会では野党が過半数を占めており、布告から約2時間半後に国会が非常戒厳の無効を決議した。憲法は国会が在籍議員の過半数の賛成で戒厳解除を要求した場合、大統領はこれを解除しなければならないことを定めており、解除要求案が議決された時点で戒厳時の軍隊の活動は法的根拠を失うという。決議を受け、大統領は解除の決断を迫られることとなり、布告から6時間に解除を表明した。また、非常戒厳で軍に指示を出した金龍顕(キム・ヨンヒョン)国防相が辞意を表明した。

 ユン大統領は自ら布告した「非常戒厳」を即解除することとなり、政治的ダメージは計り知れない。ユン大統領の支持率は韓国世論調査会社のリアルメーターの2日の発表によると25.0%、ギャラップの11月29日の調査によると19.0%であり、低迷している。

 ユン大統領は野党に国会で自身への弾劾訴追手続きを進める絶好の口実を与えることとなった。支持率低迷と弾劾訴追などによる国政の混乱が長引けば、与党議員としても世論を意識してユン政権を支えようという意欲は薄れていく。

 北朝鮮は韓国に対してごみ風船や騒音により挑発してきたが、混乱に付け込み挑発をエスカレートさせる可能性がある。米国はユン政権のもと日米韓の同盟強化を図ってきたが、金正恩朝鮮労働党総書記との直接会談を行ったトランプ氏がまもなく大統領に返り咲き、半島政策が変わる可能性があるなか、半島情勢の流動性が高まるだろう。

 韓国では2代前の朴槿恵(パク・クネ)元大統領のように、友人の国政介入問題により支持率が低迷、レームダック化し、弾劾訴追案の可決・大統領職務停止を経て、憲法裁判所から罷免されたケースもある。国内で課題が山積するなか難しい状況に追い込まれたユン大統領だが、1つ舵取りを誤れば、パク元大統領と同じ道をたどりかねない。

【茅野雅弘】

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