経済協力の再開で日韓関係は新たなステージへ~米中対立を見据えた日韓の協力強化が重要~(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏2022年の韓国・ユン政権発足以降、日本と韓国はかつてない雪解けムードのなかにある。また、円安の影響もあり、とくに福岡には多くの韓国人観光客が訪れている。ともに製造業を主な産業とし、経済面ではライバル関係と見なされる両国だが、実は両国の強みは国民の気質や文化面の相違とあいまって大きく違う。強みの異なる両国の協力は、米中対立のなかでお互いの発展のために重要な意義をもつだろう。
※本稿は、24年8月末脱稿の『夏期特集号』の転載記事です。最も近い国である日本と韓国
日本と韓国はまず距離的に近い。釜山から対馬は49.5kmしか離れていない。晴れた日には釜山から対馬が見えるくらい、日本と韓国は距離が近い。格安航空券の登場で、韓国から日本に行くには、チケットも片道1万円を下回る価格で購入でき、韓国の若者は福岡などに気軽に出かけるようになった。
私は先日、福岡を代表する観光地である太宰府に韓国人を案内することになったが、韓国人観光客で溢れていたのでびっくりした。福岡の天神などの繁華街を歩いても、あちらこちらで韓国語が聞こえてきたので、どれほど多くの韓国人が福岡にきているのか実感できた。韓国人にとって福岡は韓国から一番近い大都市で、福岡はほかの都市に比べて空港から市街中心部が近いことも大きな魅力の1つだろう。
韓国人が日本に多く来ている理由は、まず、国内旅行の費用にもう少し予算をアップしただけで、海外旅行ができることと、円安で日本の物価が安く感じられることなどがメリットのようだ。日本は食べ物もおいしいし、安全面など、韓国人にとって魅力のある国のようだ。日本と韓国は距離だけでなく、言葉の語順も、情緒も、生活の方式も、世界のどこの国よりも共通点や類似性が多いので、韓国人は日本に親近感を覚えやすいだろう。日本の至るところに韓国語の表記がしてあり、韓国人観光客のパワーを改めて感じた。
また今回、私は異例の体験をして、時代が変わったことを実感した。太宰府でお昼を食べるため、うどん店に入ったが、お店の従業員は私たちが韓国語でしゃべっていると韓国人であることを知り、韓国語で対応してくれた。韓国語でいろいろ質問をしてみたら、ボーイフレンドが韓国人で、韓国語を勉強するきっかけとなったという。大阪のレストランでも、そのような女の子に出会い、世の中が大きく変わったことを実感した。歴史のなかで過去の苦痛を味わったことのない若い世代にとって、日本と韓国の文化は、一番共感できる部分が多いのではなかろうか。
しかし、文化も気質もとても違う
日本人と韓国人は顔を見ただけでは、区別がつかないことが多い。しかし、両国民の気質ははなはだ違う。日本では地震など自然災害が多いので、たとえば建設などで手抜き工事をすると、それが後で命を奪うような惨事になりかねない。
従って、日本人はいつも慎重にならざるを得ない。万が一災害が起こっても問題ないように工事をする必要がある。その反面、韓国の歴史は外から攻められた侵略の歴史の連続である。このようにしょっちゅう戦争を経験することになると、長期的な計画は立てにくく、どうしても近視眼的で、すべてを急ぐことになってしまう。韓国人の「早く、早く」は、そのような歴史的な背景から生まれたという。
一方、日本人の完璧主義は、アナログ時代には高いクオリティをもたらす結果となり、高い評価を受けた。しかし、時代はデジタル時代となり、デジタル時代は完成度が低くても、まずアクションを起こし、その後修正するのが良い。韓国人の「早く、早く」がむしろデジタル時代に向いている気質なのかもしれない。
相手に対する感情には世代別に温度差が
筆者は1981年に日本に留学をした。その当時日本はとても豊かで、韓国は当時の日本に比べ物にならないほど貧しかった。韓国ではバナナがとても高い果物であったが、日本ではバナナがすでに安くなっていた。ウォークマンが世界で飛ぶように売れていた時代で、日本に行くと聞いたら、象印の炊飯器を買ってくるようにと頼まれた時代でもあった。筆者は1994年また日本に来ることになるが、その時でも日本に住む韓国人のほとんどの家庭でテレビはすべてソニーだった。
しかし、時代は変わり、旅行で他の国に行ってホテルに泊まったとき、テレビを見ると、テレビのブランドはほぼサムスンかLGになっていた。サムスンとLGのテレビが世界のテレビ市場を数十年間リードしているが、最近になって、中国の激安テレビが市場を侵食し始めている。サムスンやLG製品より価格が半分以下の中国製品が市場のシェアを取りつつある。
韓国人のなかでも日本の圧倒的な力を経験した世代は、日本には敵わないという意識がどこかにある。同じく日本でも70歳以上の高齢者になると、過去のことしか記憶に残っていないので、以前の記憶で韓国を見下すような態度を取る人も多い。
しかし、今のように国民1人あたりのGDPで韓国が日本を上回るようになった現在では、若者の意識は日本に対して何の気後れもなく、堂々としている。今日本では韓国ドラマが人気で、世代を問わず、韓国ドラマに夢中になっているようだ。とくに日本の若者は、韓国のファッションや化粧品が大好きで、韓国製品が若者を魅了させている。同じく、韓国の若者は、日本のアニメやJ-POPが大好きで、日本の有名アニメ作品を何回も見たという韓国の若者もいる。
中国が台頭しているなか、日本と韓国がもっと協力して中国に対抗すべきではなかろうか。日本と韓国が協力すれば、世界ナンバーワンになれる分野は多く、中国や米国も日本や韓国に一目置くことになるだろう。
両国の得意分野は
日本人も韓国人も勤勉で、手先が器用である。韓国の産業は日本の協力を得て立ち上がった。テレビも、自動車のエンジンも、製鉄の生産も、日本企業の技術移転などを経て、現在に至っている。日本の産業は一般論でいうと、部品や素材に強く、韓国は日本から部品を輸入し、完成品にして輸出している。たとえば、スマートフォンの出荷台数で世界1位はサムスン電子であるが、サムスン電子のスマートフォンには日本製の部品が多く入っている。世界でサムスン電子のスマートフォンが売れれば売れるほど、日本企業も儲かる構造となっている。
半導体の分野においては、韓国は微細加工の技術が優れていて、半導体の製造において高い評価を受けているが、日本は素材や製造装置やパッケージング技術において強みがあって、サムスン電子も日本の素材メーカーも協力するため、横浜に研究開発拠点を設けている。
IT分野などは韓国が一歩リードしている。これから産業競争力の源泉はデジタル化にあるが、日本のデジタル化には韓国中小企業との協力が求められることになるだろう。日本国民のほとんどが日常的に使っているメッセンジャーアプリ「LINE」は韓国企業ネイバーが開発したものだし、それ以外にも韓国にはIT技術に優れた中小企業がたくさんある。
一方、日本はロボットのコア部品である減速機や制御技術において世界トップレベルである。それに日本の蓄積された資本力や、ビジネス運用能力などは世界のトップレベルである。
これまで韓国の製薬産業には、日本のように世界に通用する新薬を開発する製薬会社はあまりなかった。新薬の開発には莫大な資金が必要だが、政府レベルでバイオ分野の企業を育成しており、その成果が徐々に現れている。
韓国のバイオ企業で、世界に通用する技術や製品を生み出し、その技術を世界的な製薬会社などにライセンスアウトする事例も出ている。さらに、韓国政府は近年、原発や宇宙産業などにも力を入れていて、それを輸出産業に育てようとしている。このような分野でも両国が力を合わせると、無限に成長できる可能性を秘めているのではなかろうか。
(つづく)
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