2025年01月07日( 火 )

ビーロットが大型M&A、不動産開発の「上流」補完へ(後)

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(株)ビーロット
取締役社長  望月雅博 氏

 富裕層や投資家向けに収益不動産の開発・再生や不動産投資、不動産コンサルティングなどを手がけ、2024年12月期は過去最高の通期業績の更新を予想している(株)ビーロットが、11月14日に(株)クマシュー工務店(大阪市天王寺区)を子会社化することを公表した。同じく不動産再生事業を手がける同社のM&Aでは、どのようなシナジーが期待できるのか。M&Aの狙いや、中期経営計画を踏まえた次世代の人材育成などについて、取締役社長・望月雅博氏に話を聞いた。

地元客も通うカフェ併設 地域に開かれた葬儀場へ

著名建築家・隈研吾氏がデザイン監修した横濱聖苑
著名建築家・隈研吾氏がデザイン監修した横濱聖苑

 ──2019年には、納骨堂や葬儀場を運営する(株)横浜富士霊廟(現・(株)横濱聖苑)をM&Aでグループ化されました。

 望月 横浜富士霊廟のM&Aでは、提供する食と不動産の再生をテーマに、老朽化した施設を大規模リノベーションし、商号も「横濱聖苑」に変更しました。

 リノベーションに際しては地域とつなげるということをコンセプトに、著名な建築家の隈研吾氏のデザイン監修による空間づくりや、近隣の人たちが日常使いできるカフェを併設しています。葬儀場を地域の人に利用してもらうという新たな試みです。カフェは、有名パティシエの鎧塚俊彦氏が監修しているほか、法事などで提供する料理は日本料理の笠原将弘氏、イタリアンの落合務氏が監修しています。納骨堂は明るい雰囲気で、地域に開かれた葬儀場としておかげさまでご好評をいただいております。カフェは地元の方にも多くご利用いただいているほか、生前に墓じまいなどで利用していただくことも多く、地域に根ざした施設に変えられたことが良かった点だと思っています。

 当社が手がけたM&Aは、後継者不在などの課題を抱えている企業の再生や事業継承を支援するという側面があります。横濱聖苑のM&Aは、企業と不動産の再生になるのですが、(納骨堂の再生は)宗教法人らと一緒にやっていく必要があるので、新設するようなことは難しいかもしれません。ただ、もし、目が届く範囲でチャンスがあれば、同じ取り組みを増やしていきたい意向です。全国各地の経営的に困っているところがあれば、一緒にやっていくことができるのではと考えています。

_明るく開放的なカフェスペース。パティシエの鎧塚俊彦氏監修のスイーツが食べられる
明るく開放的なカフェスペース。
パティシエの鎧塚俊彦氏監修のスイーツが食べられる

 ──横濱聖苑のM&Aによるシナジーとは。

 望月 2016年に分譲マンションの販売代理を行うライフステージ社をグループ化しました。デベロッパーから依頼を受けてモデルルームに来場されるお客さまのニーズを聞いてライフプランを提案しているのですが、新たな住まいを購入するのは、それぞれの実家や親のことを考える良い機会になっています。お墓を検討される方からのご相談は分譲マンションの購入者とも内容が近く、お客さまがご家族を想う心に寄り添うノウハウが、横濱聖苑の納骨堂をお勧めするときに活きてくるのです。

合宿で次世代育成 若手や女性の台頭も

 ──中期経営計画で掲げるベンチャースピリッツをもった次世代のリーダー育成について教えてください。

 望月 24年12月期からの中期経営計画(3カ年)では、「自社ノウハウをM&Aで、さらに活かす」ことを掲げています。次世代のリーダー育成とは、M&Aを行った企業のなかに入って企業経営・必要に応じた企業再生を担える人材の育成だと考えています。今は当社取締役が兼務で担っていますが、これからはチーム運営経験があり、把握力が強いリーダー層を派遣していくことを計画しています。

 リーダー層育成の一環として、年5回の宿泊研修を行っています。全国の営業拠点へ出向き、現地のビジネスの現場を視察するとともに、リーダー候補の社員と取締役が企業経営について議論します。地域ごとに異なる不動産市況や物件利回りを学ぶほか、若手社員やM&Aでグループに加わった社員に対して「創業の精神」「企業課題」を理解してもらうことも目的としています。実際に、研修を経て頭角を表す若手が見られはじめ、女性の活躍も目立つようになっており、大変頼もしく思っています。

 ──中計2期目に向けた意気込みをお願いします。

 望月 24年12月期は順調に進捗しています。25年12月期からはクマシュー工務店が加わりますが、引き続き中計で示している配当性向30%以上を目標に株主還元もしっかりと目指していきます。

 当社は創業期から「良い会社とは何か」を常に問うてきました。それは業績のみを追求することでも、そのために厳しい労働環境を強いることでもありません。これからは働く環境や経営の透明性といった部分をさらに洗練させていくことが重要だと考えています。多くの不動産会社ではこの部分に関する改善の余地が大きく、より一層洗練された好業績の会社をつくっていければと思っています。

(了)

【桑島良紀】


<プロフィール>
(株)ビーロット 取締役社長  望月雅博 氏1972年10月生まれ。銀行系不動産コンサルティング会社を経て、99年にサンフロンティア不動産に入社。不動産再生事業を立ち上げ、中古ビル再生業務の責任者として、マーケット調査、購入バリューアップ企画、販売管理、証券化等を統括。2006年、同社常務取締役アセット本部長に就任し、ジャスダック、東証一部上場に貢献。09年ビーロットに参画し、取締役副社長に就任。2022年から現職。

<COMPANY INFORMATION>
代表取締役会長:宮内誠
取締役社長  :望月雅博
所在地:東京都港区新橋1-11-7
    新橋センタープレイス10F
設 立:2008年10月
資本金:19億9,253万2,283円
TEL:03-6891-2525
URL:https://www.b-lot.co.jp


<プロフィール>
桑島良紀
(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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