希望を記した予言書。日本は一度地獄を見る?
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「国も企業も個人も今はドルを買え!」PHPビジネス新書(藤巻健史著)
日経平均株価が2万円付近で推移している。2012年、安倍晋三氏が首相に就任したときには、だいたい1万円で推移していたのだから、これは安倍首相の推進する経済政策「アベノミクス」の効果である!とも言われる。たしかに株価は倍増し、同時に円安が進んだことにより国内の輸出産業は勢いづいた。トヨタは11月の中間連結決算で過去最高益となる1兆5,834億円を叩きだしている。これらはアベノミクスの効果、日本が経済的な復活を遂げつつある証拠だ、と政府関係者は口をそろえる。けれども、それは本当なのか。藤巻健史参議院議員(日本維新の会)は、その著書「国も企業も個人も今はドルを買え!」(PHPビジネス新書)で今の日本の危うさを説く。
アベノミクスは単なる財政ファイナンスでしかない。これはショッキングな指摘である。財政ファイナンスとは国債の貨幣化とも呼ばれ、国が発行した国債などを中央銀行が引き受けることを言う。つまり、国の借金をお金を刷ることでまかなっているということだ。これは非常に危険な状態とされており、日本でも財政法によって原則的に禁止されている。異次元の金融緩和の正体は財政ファイナンスであり、市中に溢れたお金はいずれ、それもごく近い将来、ハイパーインフレを引き起こす。藤巻氏はこう指摘しているのである。
日本を家庭に例えると、年収600万円の家庭が毎年1,000万円使い続け、借金が1億円ある状態だと藤巻氏は説く。日銀が国債を引き受けなければ、今の日本を維持することができなくなっているのだ。そのため、日銀は異次元の金融緩和を続け、市中に紙幣をジャブジャブと供給し続けるよりほか仕方がないのである。デフレ脱却のために、と言っているが、その一時しのぎが招くのは地獄そのもの。1時間単位で跳ね上がっていく価格。1日経つと倍になっている物価。ハイパーインフレは引き起こされる下地はすでに完成している。金融緩和の終了を日銀が宣言した瞬間、日本経済は一度、地獄を見ると指摘しているのだ。
日本は地獄のふたを開けてしまった。それでも国がなくなるわけではない。国民として、どうやったら最悪のハイパーインフレに陥っても生きていけるのか。本書ではいくつかの具体的な提案もなされている。そして、その危うい状況を生き残った後、日本にとって大躍進の時代が訪れるというのである。本書は希望の書だ。日本が本当の意味での独立国、資本主義国に生まれ変わり、本来のポテンシャルを生かしていける国になる。そうすれば、大躍進することができる。その来たるべき時代に対して、今、どのような準備をしておくべきか。本書は伝説のディーラーの見る日本像に触れる、絶好の一冊となっている。【柳 茂嘉】
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