台湾や香港などの外国人投資家による日本の不動産取得が目立っている。福岡市内でも、分譲マンションだけでなく、賃貸マンションやアパートを取得する事例が散見され始めて久しい。東京・福岡で事業系不動産を取り扱う(株)トリビュートの田中稔眞社長に、インバウンドマネーの動向について話を聞いた。
外資の取得動機は高い利回りに所有権
──外国人投資家は、日本の不動産をどのように見ているのでしょうか。
田中 まだまだ日本の不動産は安いと考えているようです。また、外国人であっても所有権を取得することができ、法治国家で治安が良く、政情も比較的安定しているとして、外国投資家からの注目度は高いです。世界の大都市と比較しても利回りが高く、とくに東京、大阪、福岡の中心部の不動産に注目が集まっています。
──人口減のリスクについては、どのように考えているのでしょう。
田中 移民政策などにより、とくに大都市では人口減少による不動産価値への影響は限定的と見ている方も多いようです。形式上は「移民」ではありませんが、「特定技能」在留資格の導入により、実際に外国人労働者は増加傾向にあります。
大都市の中心部を選好 福岡なら博多・天神
──円安の影響もあるのでしょうか。
田中 非常に大きいと思いますが、そのうえで先ほど述べた資産性の高さや安全性がポイントのようです。また、日本も少なからずインフレ基調ですので、売却益を期待した売買も増えています。その筆頭が新築分譲マンションです。日本でも新築マンションは青田売りが一般的となっていますが、共用部や専有部の仕上がりが当初の説明より大幅に劣るということは、ほとんど聞かれません。品質面の安定性でも、日本の不動産(マンション)には定評があるようです。
当社のお客さまは事業会社である外資の日本法人がメインですが、個人の投資家には値上がり期待で取得して寝かせるケースがあることは聞いたことがあります。そういった場合は、税金の不払いや物件が管理不全に陥るケースもあり、注意が必要です。
──外国人投資家が選好する物件の特徴などはございますか。
田中 まずは立地で、大都市の中心部を好みます。東京であれば港区・千代田区・中央区・新宿区・渋谷区の中心地、福岡なら博多駅周辺と天神周辺などです。そういったエリアだからという側面もありますが、当社が関わっている外資の方々はホテルへの投資意欲が高いですね。また、商慣習としても現金比率が高い傾向にあるため、銀行融資が付きにくい繁華街の飲食ビルにも積極的です。逆に、中心部から外れると、ほとんど興味を示さないのが特徴といえます。
今後、台湾や香港、シンガポールなどの銀行が福岡にどんどん進出してくれば、より彼らが買いやすい環境となり、投資マネーはさらに集まっていくでしょう。そうなれば、利回りもこれまでの常識では考えられないものになっていくかもしれません。当社が関与する範囲では、開発案件に積極的な外資は確認できていませんが、日本での取引を重ね、資金調達環境が整えば、開発案件にも触手を伸ばしてくる可能性も考えられます。
【永上隼人】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中稔眞
所在地:福岡市中央区渡辺通1-1-1
サンセルコビル6F
設 立:2009年4月
資本金:1,600万円
TEL:092-292-2313
FAX:092-292-2314

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