機動力強みに創業55年 風通しの良さで定着率向上へ

(株)髙原電設

髙原猛 氏
代表取締役 髙原猛 氏

 マンションや戸建住宅、商業施設などあらゆる建造物の電気工事を手がける(株)髙原電設。今年、創業55周年を迎える同社2代目社長・髙原猛氏に、業界の課題や職人不足、職人育成、働き方改革への対応などを聞いた。

強みは機動力

 ──まずは、御社の概要および強みについてお聞かせください。

 髙原 当社は1970年(昭和45年)8月に「髙原電気商会」として創業し、78年4月に法人化しました。私は2代目社長で、就任して4年目になります。社員数は現在、施工管理者が5人、職人が12名、設計・事務スタッフを含めて20名体制です。

 当社の最大の強みは、24時間対応可能な機動力です。漏電や設備トラブルといった緊急対応にも即応できるよう、職人を常時待機するようにしています。また、九州全域および山口県など広範囲に対応可能で、過去には静岡まで出張して施工を行ったこともあります。

 ──採用、人材育成についてはいかがですか。

 髙原 当社は平均年齢が35歳と業界内では比較的若く、20~30代の職人が多く在籍しています。新卒採用に加え、近年では私の息子の友人や親族などの縁故採用などもあり、20代の入社も増えてきました。

 職人の育成については、基本的には現場でのOJTを中心としています。そのほか、福岡電気工事業協同組合が開催している研修にも参加しています。「第一種電気工事士」や「1級電気工事施工管理技士」などの資格取得者には手当を支給するほか、基本給のベースアップも行うなどして、モチベーション向上を図っています。

柔軟な現場運用で対応

(株)髙原電設    ──働き方改革への対応などは。

 髙原 現場の状況に応じて、2人体制を組むなどして作業時間を調整しています。残業を極力減らすとともに、現場の進捗状況により休日出勤が発生した場合には平日に振替休暇を取ってもらい、法定の労働時間内での運用を徹底しています。

 また、当社の売上構成は、およそ9割が民間工事で、公共工事は1割程度です。我々が手がける電気工事は、新設工事の工程のなかでは後半にあたるため、どうしても前半工事部分の遅れのしわ寄せがくるケースが少なくありません。民間案件は工期管理が難しい面もありますが、工期が厳しくなるなかでも、当社の強みである機動力を生かして、すべての工事を工期内に完了させています。

課題は職人不足と資材高騰

 ──業界全体の課題については、どのようにお考えでしょうか。

 髙原 慢性的な人手不足が続いています。建設業界全体に共通していえることですが、休日出勤や長時間労働があるから入職者が少ないのではなく、業界自体のイメージがあまり良くないことに加え、待遇改善の努力不足も要因だと感じています。大手では週休2日が標準になってきている一方で、現場ではまだまだ厳しいというのが現状です。

 また、資材高騰も大きな問題です。電線や照明器具などの資材価格が年々上昇しており、長期工事ほど予測が難しくなっています。とくに民間案件では契約後の価格変更が難しいため、見積もりと実際の仕入れ価格に乖離が生じることも少なくありません。価格変動リスクの高まりは経営上の課題です。

 ──職人不足に対する女性や外国人材の採用については、どのようにお考えですか。

 髙原 現在のところ、外国人技能実習生の採用はしていませんが、将来的には検討しております。また、女性の現場進出には期待しています。近年、建設現場における女性の方々の活躍には、目覚ましいものがあります。当社でも職場環境整備としてトイレを洋式化するなど、女性が働きやすい環境づくりを進めています。

 若手職人採用については今後、工業高校や専門学校への訪問に取り組んでいきたいと思っています。そのほかにも、ホームページやSNSでの情報発信も強化していくことも考えています。会社の姿勢や雰囲気が伝わる発信が重要だと感じています。

定着率向上で次の50年へ

(株)髙原電設    ──先代から引き継いだこと、そして変えたことはありますか。

 髙原 先代の経営方針を尊重しながらも、私は「風通しの良さ」を重視しています。私は現在51歳で、従業員との年齢差も近いほうです。若い社員との対話により距離を縮め、何でも言い合える関係性を築くことが、定着率向上にもつながっています。社内での小さな要望にも耳を傾け、迅速に対応することで信頼関係を築いています。

 ──今後の展望についてお聞かせください。

 髙原 技術力を磨き、職人を育てながら、現場管理職へのキャリアステップも整備していきたいと考えています。当社は今年8月には創業55周年を迎えます。社員が誇りをもてる会社づくりを続け、さらに次の50年に向けて新たな一歩を踏み出していきたいと思います。

【内山義之】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:髙原猛
所在地:福岡市南区弥永4-9-2
創 業:1970年8月
設 立:1978年4月
資本金:2,000万円
URL:https://td-co.jp


<プロフィール>
髙原猛
(たかはら・たけし) 
1974年2月生まれ、福岡市中央区出身。92年、筑紫工業高等学校(現・筑紫台高等学校)を卒業後、(株)髙原電設に入社。部長職を務めた後、2021年11月に代表取締役に就任した。趣味はバイク・ゴルフ・サウナ。

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