5月の実質賃金、前年比2.9%減 名目賃金は増加も、物価高に追いつかず

 厚生労働省が7日に公表した2025年5月の「毎月勤労統計調査(速報値)」によると、物価の上昇に賃金の伸びが追いつかず、物価変動を加味した実質賃金は前年同月比で2.9%減となった。実質賃金のマイナスは5カ月連続で、マイナス幅は23年9月以来の大きさに達した。高水準の春闘賃上げが反映された一方、依然としてインフレ圧力が強く、労働者の購買力は低下が続いている。

名目賃金は増加傾向維持 基本給は堅調

 1人あたりの現金給与総額(名目賃金)は30万141円と、前年同月比で1.0%増加した。これで41カ月連続のプラスとなるが、伸び率は4月から1.0ポイント縮小し、上昇ペースに陰りが見える。

 内訳では、基本給などの所定内給与が2.1%増の26万8,177円と堅調に推移し、43カ月連続のプラス。これは春季労使交渉(春闘)での高水準の賃上げが反映されたものとみられる。連合の集計によれば、25年の平均賃上げ率は5.25%と、2年連続で5%台に達している。

 一方で、ボーナスなどの「特別に支払われた給与」は18.7%減と大きく落ち込み、名目賃金全体の伸びを抑える要因となった。厚労省は「金額の変動が大きいボーナスの減少が、全体の賃金の伸びを鈍らせた」と説明している。

インフレ圧力は依然強く 「コメ」や外食で大幅上昇

 実質賃金が減少した背景には、依然として続く物価高がある。5月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比4.0%上昇と、名目賃金の伸びを大きく上回った。これにより、名目上は増加した賃金も、実際の購買力は低下している。

 なかでも食品の値上がりが顕著で、コメ類は前年同月比101.7%増と、過去最大の上昇率を記録。外食ではすしが6.3%、おにぎりが19.2%上昇するなど、生活に身近な食材でのインフレが家計を直撃している。

実質賃金の計算方式変更も影響

 また、3月からは新しい実質賃金算出方式が導入され、消費者物価の「総合指数」を用いるかたちに切り替えられた。これにより、新方式で算出された5月の実質賃金の減少幅は2.4%減と、従来方式(2.9%減)よりも0.5ポイント緩やかになっている。これは実質賃金の「見え方」に影響を与える要素であり、今後も留意が必要だ。

【寺村朋輝】

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