熊本で中継車がGSに割り込み、テレビ局が謝罪
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平成28(2016)年熊本地震でマスコミの取材姿勢に多くの批判が集まっているが、そのなかで関西テレビが18日、自社の社員やスタッフに不適切な行動があったとして公式HPで謝罪した。地元住民がツイッターに投稿した写真をきっかけに騒動が広まり、会社も認めざるを得ない事態に陥った。住む家を失い、水や食料に困窮する被災者の神経を逆なでする行為に、怒りの声が上がっている。
ツイッターに次のような文章が投稿された。「ガソリン入れるために朝早くからたくさんの人が並んでたのに横入りされて、 母が『後ろに他の人もいるので並んで下さい』て言ったのにも関わらず無視して我先にとガソリン入れてました。 テレビ局だからいいんですか?? もう少し考えて欲しい。」。写真には中継車と関西テレビのマークがはっきり映っていた。投稿したのは益城町在住の女性会社員。ツイートは次々とリプライされ、ネット上に拡散していった。
関西テレビは18日になり、同局の中継車が17日午前7時45分ごろ、菊陽町のガソリンスタンド付近で給油待ちしていた車の列に割り込んでスタンドに入り、給油をしていたと公表し、公式HPで謝罪した。同局の企業広報によると、中継車には報道記者や技術スタッフら5人が乗っており、他の車で並んでいた女性から割り込みを指摘されながら車内から頭を下げただけで、そのまま給油した。午前8時から益城町の福祉センターで中継を行う予定で、中継車ではほかのスタッフの取材素材を送信する作業があり、時間が切迫していたという。「割り込みの認識はあった」と認め、 同局は中継車と乗っていたスタッフを撤退させ、大阪に戻り次第、さらに社内調査を進めるとしている。
同局はHPで「被災地の皆様が多大な労力を割いておられるなかで、あってはならない行為でした」として、「現場で給油をお待ちになられていた皆様に、大変なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。また、多くの皆様にご不快の念を抱かせてしまったことにつきましても、お詫び申し上げます」と謝罪した。地元住民だけではなく、全国の視聴者に対しても非を認める内容であり、メディアがこのような形で詫びるのは異例だ。
メディアで取材する人間が現場で特権意識にとらわれることは少なくない。情報発信のためには何をやっても許されると思うようになり、取材相手に締め切りや中継時間をちらつかせてコメントを引き出そうとする。しかしそれはかえって事件の関係者や事故の被害者、自然災害の被災者らの神経を逆なですることになってしまう。熊本地震でもヘリコプターの騒音が生き埋めの救出作業を妨げている、中継の強烈な照明が被災者らの生活を邪魔しているなどの不満の声が広がっており、悲惨な様子ばかりを感情的に報道する姿勢に批判も多い。
メディアの役割とは何か。それは適切に情報を発信し、被災者の生活回復に貢献することである。今回の関西テレビの対応を他山の石とし、自らの襟を正す機会としたい。
【平古場 豪】
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