下請企業に約5,000型の金型保管
公正取引委員会と内閣府沖縄総合事務局は10日、YKKAP(株)(本社:東京都千代田区、魚津彰代表)、(株)YKKAP沖縄(本社:沖縄県うるま市、伊藤万喜男代表)、琉球YKKAP工業(株)(本社:沖縄県西原町、松本隆男代表)の3社に対し、下請代金支払遅延等防止法(下請法)違反があったとして勧告を行った。
公取委によると、YKKAPは建材や部品の製造を委託している下請企業に対し、発注を長期間行わないにもかかわらず、金型や樹脂型などの保管を無償で求めていた。
対象となった金型は計4,997型にのぼり、下請企業67社が保管していた。発注がない状態でも、廃棄や引き取りには同社の承諾が必要とされ、事実上、下請企業側が保管費用を負担する構図になっていた。
同社はその後、一部金型を回収・廃棄するとともに、保管費用として約3,414万円を下請企業に支払った。
沖縄子会社でも同様の問題
同様の行為は子会社でも確認された。(株)YKKAP沖縄では、建材部品の製造を委託した下請企業に対し、発注がない状態にもかかわらず金型1型を無償で保管させていた。後に廃棄し、保管費用として7万7,000円を支払った。
また琉球YKKAP工業でも、建材や工具部品の製造を委託した下請企業6社に対し、計87型の金型を長期間保管させていたことが確認された。保管費用として約31万円が支払われている。
公取委はこれらの行為について、下請法が禁止する「不当な経済上の利益の提供要請」に該当すると認定し、3社に対して再発防止を含めた勧告を行った。
なお、下請法は2026年1月の法改正により「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」へ名称変更されたが、本件は改正前の取引であるため従来の下請法が適用された。
金型保管問題とは何か
今回の事案の背景にあるのが、製造業で長年問題視されてきた「金型保管問題」である。金型とは、プラスチック部品や金属部品を量産するために用いる専用の型で、1つあたり数十万円から数百万円、高いものでは数千万円におよぶこともある。
多くの場合、発注企業の製品専用に設計されるため、発注が止まっても下請企業は金型を処分できない。発注企業の許可がなければ廃棄できず、保管スペースや維持費だけが下請企業に残る。このため中小企業の工場では、発注のない古い金型が長年倉庫を占拠し続けるケースが珍しくない。
製造業に根付く「見えないコスト」
金型保管は、製造業の下請構造のなかで「見えないコスト」として長く放置されてきた。とくに自動車、電機、建材など部品点数の多い産業では、発注企業側が金型を下請企業に保管させる慣行が広く存在する。
中小企業庁や公取委は近年、この問題を「型管理問題」として重点的に取り締まっており、発注停止後の金型保管費用の負担や早期廃棄ルールの明確化を求めてきた。
当社でも金型保管問題にかかわる公取委勧告は再三報じてきた。政府は2023年以降、サプライチェーンの公正化政策の一環として、金型管理の適正化を重点テーマの1つに掲げている。
日本型サプライチェーンの転換点
今回の勧告は、個別企業のコンプライアンス問題にとどまらない。発注企業がサプライチェーンのコストを下請企業に転嫁する構造は、日本の製造業の競争力を支えてきた一方で、中小企業の収益力を圧迫してきた。近年、政府が「価格転嫁」や「取引適正化」を強く打ち出している背景には、こうした構造的問題がある。公取委による勧告は、製造業の取引慣行の見直しを促す象徴的な事案となりそうだ。
【寺村朋輝】








