2024年12月22日( 日 )

熊本地震、2夜連続の恐怖が止めた心の時計

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集積された災害ゴミ<

集積された災害ゴミ

 平成28年(2016年)熊本地震で、筆者は14日午後9時26分の地震を受けて、翌15日に熊本市へ向かった。市内には両親の住む実家がある。当日は実家で宿泊し、16日午前1時25分の地震に遭遇した。そして地震発生から1週間が過ぎた。

 実家がある熊本市西区二本木は、2度の大地震によって、建築物の倒壊が数軒発生している。一見、無事に見えても「倒壊のおそれがある」として、行政指導で立入禁止になった家も少なくはない。最初の地震発生から1週間が過ぎ、断続的に起きる地震に注意しつつ、それぞれの家で片づけ作業が行われていた。実家の近所にある災害ゴミの集積場所には、破損した家具やテレビ、割れた食器類などが捨てられ、積み重なっていた

 実家の水道は復旧し、生活用水に困ることはなくなった。近くのスーパーは営業を再開し、家族連れの買い物客で賑わっていた。おにぎりや弁当、水のペットボトルがぎっしりと棚を埋めているコンビニもあった。家の近くでは時折、遊んでいる子どもたちの声が聞こえてくる。まるで、あの地震が悪夢であったかのように思えてしまう。

1時26分過ぎで止まった時計<

1時26分過ぎで止まった時計

 重たい破損した家具をほとんど運び出し、散乱した小物の整理を始めた。何らかの理由で止まってしまった時計を時刻調整するなかで、1階の台所の壁に掛けてあった時計が「1時26分」をさしてまま止まっていることに気付いた。時計の裏側を調べると、地震の衝撃で外れたのか、電源となる電池がなくなっていた。このことを、筆者から指摘されて、両親は初めて気付いた様子だった。

 昼間、両親は家の中の片付けをしているが、夜になると不安で眠れず、家の外に出て車中泊をしている。2夜連続で大地震を経験したことがトラウマになったのかもしれない。25日の午前0時44分頃、また、熊本県熊本地方でマグニチュード4.4の地震が発生し、熊本市西区、宇城市で震度4が観測された。震源が近いことで揺れが大きく、「怖くて一睡もできなかった」と母。いつ起きるかわからない地震の恐怖は1週間経った今も「1時26分」のままで続いている。止まってしまった心の時計が動き出すのはいつになるのだろうか。

【山下 康太】

 

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