投票率アップ目指す改正公選法、実現性に疑問
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「共通投票所制度」の創設などを決めた改正公職選挙法が6月19日に施行される。今回の改正の内容は、「共通投票所制度」の創設のほか、「期日前投票の投票時間の弾力的な設定」「投票所に入ることができる子どもの範囲の拡大」など、有権者が投票しやすい環境を整えることを目的としている。次の参議院議員選挙から実施される予定であり、実現に向けた取り組みについて福岡県と福岡市、北九州市の選挙管理委員会に話を聞いた。
「共通投票所の設置」にかかる費用は億単位
従来の制度は、小学校や公民館など選挙管理委員会が指定する投票所でしか投票できなかった。今回の改正では、大勢の人が出入りする、たとえば駅や大型商業施設などに自治体の判断で投票所を設置でき、その自治体の住人である有権者であれば投票できるようになる。ただし、実現するためには二重投票や不正防止の対策としてリアルタイムで確認できるシステムが必要。全投票所を通信回線とパソコンでつながなければならない。福岡市と北九州市の選挙管理委員会は、「工事費やパソコン購入費などに億単位のコストがかかり、今夏の参院選までの導入は厳しい」とのこと。福岡県選挙管理委員会に確認すると、「今のところ、県内の他の市町村からも設置の話は来ていない」という。福岡県下では「共通投票所の設置」は見送りとなる公算が強くなった。
期日前投票の投票時間延長も「?」
期日前投票の投票時間は、現行、開始時刻は午前8時30分、終了時刻は午後8時であり、開始時刻の繰上げおよび終了時刻の繰下げは不可。今回の改正により、開始時刻の2時間以内の繰上げおよび終了時刻の2時間以内の繰下げが可能となった。自治体の判断で午前6時30分から午後10時までの期日前投票が可能となる。その実現の可能性について、「費用面なども含めて問題や課題が多い」(福岡市)、「時間延長にとも伴う検証ができていない」(北九州市)という。
投票率アップに必要な「意識改革」
今回の改正で、投票所に入ることができる子どもの範囲が、「児童、生徒その他の18歳未満の者」に拡大された。これまで、投票所に入ることができるのは「幼児その他の選挙人とともに投票所に入ることについてやむを得ない事情がある者」となっていた。現実には自治体によって臨機応変に対応していたところもあり、今回の改正で正式に「18歳未満の者」が投票所へ入ることが認められた。幼少期から投票所の雰囲気を知ることで、将来の有権者に投票の仕組みや選挙の意味を理解してもらうなど、啓発にもつながることが期待される。
直近の国政選挙の投票率は2014年12月の衆議院議員選挙で52.66%。戦後最低の投票率であった。また2013年7月の参議院議員選挙では52.61%と戦後3番目に低い投票率であった。投票率アップを目的とした「共通投票所」の創設をはじめとする投票しやすい環境整備の取り組みは一定の効果が期待できる予定であった。今回の参院選では厳しいようだが、早いうちに国政選挙で実現し、投票率のアップにつながるよう期待したい。
【吉武 輝実】
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