2024年12月24日( 火 )

『胆(たん)』を鍛えよ~霧島ホールディングス(株)江夏専務が福岡で熱弁

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 8月25日、福岡市内のホテルで日本公庫中小企業福岡・北九州懇話会定期講演会が行われ、宮崎県都城市の焼酎メーカー・霧島ホールディングス(株)の代表取締役専務・江夏拓三氏が登壇した。

霧島ホールディングス(株) 江夏 拓三 代表取締役専務<

霧島ホールディングス(株) 江夏 拓三 代表取締役専務

 演題は「夢をかたちに」。霧島酒造と言えば、「トロッと、キリッと」のキャッチコピーでおなじみの「黒霧島」(通称:黒キリ)の爆発的ヒットでその名が知られるようになった酒造メーカーである。そのほか、発売80年を越える「霧島」をリニューアルし、横綱・白鵬関を起用したCMなどでも話題となった「白霧島」、年に2回しか市場に出ない希少価値の高い「赤霧島」など、次々にヒット商品を世に送り出している。同社が秀逸なのは開発力ならびに発想力であることは言うまでもないが、今回の講演会も、音楽が流れながらの珍しいスタイルだった。江夏専務は、「音楽と講演会を組みわせたものはないですよね?皆さん、これが発想ですよ」と語り、講演会が幕を開けた。

 同社は、グループ全体では売上高700億円を超える企業となった。4年後の2020年には1,000億円を目標とする。「前期、東京、大阪で売上が2ケタ近くの伸びを頂戴し、本格焼酎市場全体で2割超のシェアを確保することができました。(市場に出回っている焼酎の)5本に1本が霧島という計算です。それもこれもすべては従業員のおかげです」(江夏専務)。

 “全従業員の物心両面の幸せを願う”。これは稲盛和夫氏の名言で、JALを再生させた哲学でもある。
 江夏専務は「社員が、全員が、頑張ろうという気持ちになれたから、JALは再生できました。これからの企業は従業員を大切にする企業が伸びる」と熱弁し、従業員やその家族を大切にする姿勢が企業の成長につながっているとした。また、モンゴルのとある遊牧民族を例に出し、ヤギ、ヒツジ、牛、馬、ラクダの五畜が300~400頭いるなかで、この民族は、みんな五畜の血筋や名前を憶えていることを紹介。会社を経営するうえで、従業員の名前を覚えること、そして会社に入れた以上は面倒を見ることを怠ってはいけないとした。

忸怩(じくじ)たる思いが人生を変える

 江夏専務は、創業者である祖父・吉助、父・順吉の思いを胸に、今からちょうど20年前の1996年、兄の順行氏と2人で事業を引き継いだ。だが、当時は米、麦、そばを原料とする同業メーカーの全盛期。芋焼酎の認知度は低かった。さらに同業者らは宮崎県内にも営業攻勢をかけ、地元でテレビCMを打たれるなど、悔しい思いも味わった。「泣いても、泣いてもどうしようもない。いつか見ておれ!」――その忸怩(じくじ)たる思いが人生を変え、企業を変えた。

kouen 江夏専務らは、祖父の代から続く、「胆(たん)」を鍛えた。胆から生み出された馬力もあり、1998年6月に「黒霧島」が誕生する。その後、創造開発型の企業を目指し、若い社員には使命を与えて結果報告させるなど、若者にチャンスを与えて人財教育を行った。これがデフレ化で売上を7倍、収益力を中小製造業の4.5倍にする原動力となった。福岡、広島の地方都市で市場を温め、満を持して東京、大阪の首都圏に営業で打って出た戦力も功を奏した。

 企業成長の背景には、徹底した人財教育と緻密なマーケティングがあるのは言うまでもないが、同社の躍進のキーワードは、「胆(たん)」である。
 「“脳を発酵させる”という例えをよく使います。胆があって下から湧き上がるものが頭に行けば、脳が活性化します。胆を鍛えると、クリエイティブ、アイデアが出てきます。そして、その喜びを社内でシェアするから、我が社の社員はとても明るい」(江夏専務)。

 “桃李(とうり)ものを言わざれども下(した)自ら蹊(みち)を成す”。桃やスモモは何も言わないが、花や実を慕って人が多く集まるので、その下には自然と道ができる。徳望のある人のもとへは人が自然に集まることのたとえ(デジタル大辞泉より抜粋)――である。
 心を高め、仕事に情熱を注ぎ、夢をかたちにすること。夢をかたちにするためには、胆を鍛えることと江夏専務は力説し、最後に「(中小企業経営者のみなさん)胆を鍛えましょう!」の言葉で講演を締め括った。

【矢野 寛之】


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