北九州市小倉南区にある小倉カンツリー倶楽部は、1961年開場、60年以上の歴史を持つ地元有数の会員制ゴルフ場である。だが近年、会員の除名処分をきっかけに、運営の在り方をめぐる混乱が表面化している。問題は除名にとどまらず、特定業者への発注集中、人事対応、株主対応、さらには決算・帳簿の開示をめぐる訴訟へと広がっている。
除名の発端はクラブ選手権でのトラブル
除名問題の発端は、2024年9月29日に行われた倶楽部主催の倶楽部選手権での出来事だった。16人によるトーナメント戦の決勝局面で、勝敗決定後も特定会員がプレーを継続したことをめぐり、ルール違反ではないかとの指摘が出た。口論は次第に激しさを増し、当該会員が暴言を繰り返したうえ、仲裁に入った会員を停止中のゴルフカート座席上に転倒させる事態に発展。通報を受けた警察が出動する騒ぎとなった。
これを受け、同年10月6日に開かれた倶楽部理事会は、関係した3人の会員について、利用規約違反を理由に除名処分を決議した。しかしその後、3人のうち1人、騒動のそもそもの発端をつくった人物だけが除名を解除され、地位を回復している。この人物は筆頭株主の親族にあたるとされている。
除名された残る2人は処分の不当性を訴え、同年12月23日に理事会に対して処分の取り消しを求めた。しかし、受け入れられなかったため、25年1月6日には運営会社を相手として、福岡地裁小倉支部へ地位保全の仮処分を申し立てた。仮処分は同年2月13日に却下されたが、5月には地位確認を求める本訴を提起しており、司法判断に委ねられる状況が続いている。
特定業者への発注集中と随意契約の実態
除名問題が明らかになって以降、同倶楽部のさまざまな問題が表面化した。その1つが、ゴルフ場施設工事をめぐる特定業者への発注の偏りである。北九州市小倉南区の建設業者に対し、24年11月以降、短期間に多数の工事が発注されている実態が具体的な金額とともに列挙されている。
管理棟内装工事(約253万円)、屋根防水工事(約176万円)、エアコン設置工事(約93万円)、照明器具交換工事(約151万円)などに加え、25年1月にはシャッターガレージ工事として330万円超の支出も確認されている。また、営繕料として毎月20万円、WEBコンサルティング料として月10~20万円の支払いも続いていた。
株主の1人は「相見積もりを取らず、特定業者への発注を繰り返している。どの工事も高額すぎる」と指摘している。これに対し、運営側がどのような内部手続きを経て発注を決定していたのかは明らかになっていない。
人事対応と内部統制への疑念
また、このような特定業者への発注に疑問を呈した関係者が、配置転換や退職に追い込まれている実態も明らかになった。発注状況に批判的であった支配人が異動を命じられ、退職に至ったほか、同様に異動を受けた職員が複数いるとされる。
こうした人事対応が、業務上の必要性に基づくものなのか、それとも内部からの問題提起を抑え込む意図があったのかは、ガバナンスの観点から検証が必要ではないか。内部統制が十分に機能していなかった場合、経営判断の適正性そのものが問われかねない。
帳簿開示請求訴訟と決算の不透明さ
そして25年1月には、36人の株主・関係者が、会社法に基づき会計帳簿の閲覧を求めて福岡地裁小倉支部に提訴した。請求理由として、特定業者への発注、取締役による商品券の私的利用、株式譲渡をめぐる差額受領、湯原プロへの高額出費などが列挙されている。
原告側は「24年9月以降、経理が不透明になり、帳簿閲覧を求めても会社が応じない」と主張しており、ガバナンスと説明責任の在り方が改めて問われている。
問われる名門ゴルフ場の統治体制
一連の問題は、単なる会員間トラブルや経営判断の是非を超え、会員制ゴルフ場という特殊な組織形態におけるガバナンスの限界を浮き彫りにしている。除名の妥当性、発注の透明性、人事の公正性、株主への説明責任──これらが十分に果たされていたのかは、3月にも司法判断が示される見込みの会計帳簿の閲覧をめぐる訴訟や、今後の運営側の対応によって明らかになるだろう。
長い歴史を誇る小倉カンツリー倶楽部が信頼を回復できるかどうかは、こうした疑念に正面から向き合い、説明責任を果たせるかにかかっている。
【内山義之】








