アデランスが非上場化するワケ(前)
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高橋恵子さんのオーダーメイドウィッグのテレビCMでおなじみの(株)アデランスが、MBO(経営陣が参加する買収)で非上場化する。
航空会社スカイマーク(株)の再建で知られる投資ファンド、インテグラル(株)傘下のアドヒアレンス(株)が、アデランス株のTOB(株式公開買い付け)を実施。TOBが成立した後、アデランス創業者の根本信男会長兼社長と津村佳宏副社長が同社に50.1%出資して、MBOを実施する。これにより、アデランス株は2017年2月をメドに、東証一部を上場廃止になる見通し。非上場に至る背景を探る。ファッション感覚で人気、女性用かつらのウィッグ
「ビジネスモデルを転換していく必要がある」――津村佳宏副社長は10月14日の会見の席上で、非上場化に踏み切る理由をこう説明。女性用かつら市場が激変し、過去のビジネスモデルが通用しなくなったことを挙げた。かつて“かつら”と言えば男性用かつらを指していたが、今日では女性用かつらが主流だ。
女性用かつらは「ウィッグ」と呼ばれ、ファッション性が高いものが人気だ。白毛と馴染ませてボリュームをアップさせたり、和装やパーティのときなど、服装に合わせてヘアスタイルを変えたりする女性が増えている。
(株)矢野経済研究所の16年ヘアケア市場の調査によると、かつらや増毛関連の毛髪市場規模は、前年度比0.1%増の1,402億円と横這い。男性の需要は縮小が続く。その代わりに、発毛や育毛などの市場が成長していることがある。発毛・育毛市場は2.8%増の672億円と好調だ。
男性用かつらが落ち込むなかで、拡大を続けているのが女性用かつら、おしゃれのアイテムとして買うウィッグだ。格安ウィッグに新規客を奪われる
女性用かつらは、オーダーメイドで40~50万円程度、既製品でも10万円程度するため、高額商品のイメージが強かった。
近年は、女性をターゲットにしたウィッグ市場に、異業種からの参入が相次いだ。小林製薬(株)や美容室チェーンの(株)田谷のほか、通販会社らが、独自開発したウィッグを売り始めた。台風の目となっているのが、(株)ユキ(愛知県蒲郡市)の低価格帯のかつらだ。アデランスはこれまで積極的なテレビCMで新規顧客を掘り起こし、主要な販路である百貨店での展示会を重要な販売手法に据え、成長してきた。ユキは、アデランスが展示会を行う百貨店の隣接の商業施設で、安価なかつらを売って、新規顧客を奪っていった。
格安ウィッグの台頭による価格破壊が席巻し、アデランスの業績悪化に拍車がかかった。2016年3~8月期の連結決算は、売上高が前年同期比5%減の378億円、営業利益は63%減の1億円、最終損益は13億円の赤字(前年同期は3億円の黒字)に転落した。
3~8月期では、オーダーメイド品であるアデランス事業の女性用の新規顧客の売上は前年同期比27%減った。女性用レディメイド品のフォンテーヌ事業は、百貨店やGMS(総合スーパー)の売上が5%減だ。価格破壊が進み、高価格帯のオーダーメイド品をドル箱とした過去のビジネスモデルが通用しなくなった。そこでいったん非上場化して、ビジネスモデルを再構築する。インターネットなどへの広告掲載を積極的に増やし、レディメイドのウィッグの新規需要を掘り起こし、オーダーメイドにつなげていく戦略だ。
(つづく)
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