2024年11月22日( 金 )

再生エネルギー普及伸び悩む、新電力は特徴で勝負せよ!(後)

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動かない低圧需要家

 なぜ普及しないのか――。1つは、始まったばかりのサービスであるということが挙げられる。前述した通り、今年完全自由化が始まったばかりで認知が進んでいない。ユーザーが自分から積極的に電気料金プランを考え、メリットを比較検討するまで至っていないのが現状なのである。

 2つ目は一般家庭など低圧帯では価格メリットが出にくいということ。現在、多くの新電力では九州電力など電力会社の料金プランをもとに料金を設定している。新電力の料金は、たしかにメリットは出るものの、大幅に変わるものではないケースがほとんど。もともと月1万円程度の電気料金に対して数百円のメリットが生まれたからといって、新しい契約を結ぼうというモチベーションにはつながっていないのである。「何となく新規契約はわずらわしい」「今は様子見をする」といったような世帯が多いことが考えられる。

 一方、福岡県に本社を置くPPSで、低圧帯の販売が最も進んでいるのは西部ガスだ。これは西部ガスの従来からの顧客に支払いの一本化というメリットを加えたうえで営業展開していることが奏功していると考えられる。
 PPSの現状を一言で言えば、様子見されているといったところだろう。

特徴ある電力サービスに

house 電力市場の開放による電力自由化は、ようやくこれからといった状態だ。全国的に言えば、携帯電話会社やインターネット関連会社が電力サービスを展開し、各社で特徴のあるサービスを提示している。先述のみやま市だけでなく、福岡県内には他にも特徴のあるPPSがある。八女市に本社を構える(株)アズマだ。

 同社はエネルギーの地産地消を目指し、新電力市場に参入した。同社は建築板金業として、主に戸建ての屋根工事に従事してきた。その経験を生かし、太陽光温水器事業を展開。これで屋根上の設備に関する技術を蓄積し、太陽光発電事業を開始した。太陽光事業を行うなかで、電力の地産地消によるメリットを考えるようになったという。同社の中島一嘉社長は、これまで大手電力会社に支払うしかなかったお金が地域で活用されるようになれば、地域創生に役立つと語っている。屋根上での太陽光発電で得られた電力を同社がまとめて、地域に販売していく考えだ。

 ガスや携帯電話の支払いと一括して利便性を上げたり、ポイント還元したり、地方創生に役立てようとしたりなど、PPS各社は実にさまざまな考えで電力事業に取り組んでいる。今後、家庭を含む電力の需要家は、その特徴を選んで、より便利でかしこい選択をするようになっていくと考えられる。

 今はまだ黎明期。今回は原発に関する事情以外の部分での新電力市場の現状についてレポートした。これから変貌を遂げる新電力市場に、引き続き注目していきたい。

(了)
【柳 茂嘉】

 
(中)

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