プーチンを取るか、スーチーを取るか?注目すべき新生ミャンマーの国造り(1)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
ロシアのプーチン大統領が来日し、12月15日と16日の両日、安倍首相との間で15回目となる首脳会談に臨む。日本にとっては念願の北方領土問題の解決に道筋をつけるチャンスである。また、ロシアにとっては欧米からの経済制裁が解除されないため、日本から経済協力が得られれば万々歳といったところであろう。
とはいえ、71年もの間、棚上げ状態となってきた日ロ間の領土問題のことだ。安倍首相も言うように「簡単に解決できる課題ではない」。なぜなら、ロシアにとっては「第二次世界大戦の結果として自国領土となった」という認識が強いからである。ナショナリズムの台頭が著しい昨今のロシアにとって、国民の血の代償として獲得した領土をおいそれと手放すことは考えにくい。
さらには、開発が遅れ、社会インフラの整備がままならなかったロシアの極東シベリアからカムチャッカ半島、千島列島に至る地域は近年、経済成長が著しく、かつてほど「モスクワから忘れられた辺境の地」ではなくなっている。そのため、このところ4島の生活環境は大きく改善が見られるようになった。道路や飛行場もでき、学校や病院の態勢も整ってきているのだ。
海洋資源や地下の鉱物資源に恵まれているため、中国や韓国の企業も次々と進出している。水産加工の工場、水力発電所の建設、レアメタルの採掘現場などでは北朝鮮の出稼ぎ労働者の存在が確認されているほどだ。実は日本政府も確認しているように、北方領土には金やコバルトなど多様な地下資源が眠っているのである。
プーチン大統領はメドベージェフ首相を北方領土に派遣し、自国領土であることを盛んに内外にアピールしている。また、色丹島をはじめ要所、要所に移動式とはいえミサイルを配備し、軍事基地化も進んでいるようだ。こうした動きの裏には中国との関係強化が隠されている。なぜなら、プーチン大統領は習近平主席との会談を通じて、「中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)からの資金でシベリア鉄道はもとよりロシアの極東方面や北極圏の開発を進めたい」との意向を明らかにしているからである。
そうした背景もあり、ロシアと中国との間では共同の軍事演習の頻度と規模が拡大する一方となっている。ロシアは中国の海南島に、そして中国はロシアの千島列島にそれぞれの海軍の基地を保有する交渉まで水面下で進んでいる模様だ。そうなると、ロシアが北方領土を日本に返還する可能性は、アメリカが日米安保条約の適用範囲から外すことを条件としない限り難しいだろう。逆に、ロシアは中国との軍事関係を強化することで、日本との交渉を有利に進めようとしているに違いない。
ここは冷静にロシアの動きを分析し、2兆円に及ぶ経済協力を優先した挙句、領土問題は未解決のままとなるような最悪のシナリオでほぞを噛むことがないようにする必要があるだろう。プーチン大統領は実にしたたかな交渉人だ。相手を自分の土俵に引きずり込み、思うように操ることにおいて、天才的な能力を発揮する。今回の訪日の直前にも、世界を煙に巻く発言で驚かせたばかりだ。
それは「テレポーテーション(瞬間移動)技術の開発に取り組んでいるとのウワサは本当か」とイギリスの記者からの質問への答えである。曰く「皆さんを失望させるわけにはいかないな。2035年までに実現すべく国家を挙げて取り組んでいる」。「ロシアがハッカーを使ってアメリカの大統領選挙をトランプ候補に有利になるように仕組んだ」との批判に関連しての質問だったが、相手の気持ちを鷲掴みにする、プーチンの得意技による一本勝ちであった。(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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