マーケティングの力で USJをV字回復させた立役者が去る!(後)
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「ハリポタ」効果で入場者数は3年連続で更新
森岡氏のマーケターとしての手腕はいかんなく発揮された。USJ改革の第一段ロケットは、ファミリー層を取り戻すこと。USJはもともと映画好きな大人をターゲットにしていたため、低年齢の子供が楽しく遊べる場がなく、ファミリー層の集客が弱かった。
そこで12年春、子供連れファミリー層をターゲットにした「ユニバーサル・ワンダーランド」を建設。それまで740万人程度だった年間入場者数は975万人へと大幅に増加した。13年春には、USJ人気を不動にしたアトラクション「バックドロップ」を導入。ジェットコースターを「後ろ向き」に走らせる、という画期的なアイデア。バックドロップは、オープンと同時に長蛇の列ができ、国内のアトラクションの待ち時間記録を更新(9時間40分)。13年には年間入場者数1,015万人を記録した。
第二段ロケットは集客の関西依存からの脱却。14年7月、450億円を投じ、世界的に大ヒットしたファンタジー映画『ハリー・ポッター』の世界観を細部までこだわってリアルに再現した新エリアをオープンした。14年の入場者数は、開業初年度の1,102万人を上回る1,270万人を達成した。大型アトラクションをオープンした翌年は入場者が減るのが普通だが、その常識を覆した。3年連続で過去最高を更新し、16年の入場者は1,460万人に達した。ハリポタ効果で、集客が全国に広がったためだ。
20年には500億円を投じて、任天堂の人気キャラクター、マリオなどが登場する新エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」を開設する。任天堂エリアで300万人の入場者を増やせると期待されている。米コムキャストがUSJを買収し、沖縄進出計画は中止
第三段ロケットはテーマパークの多拠点展開。政府や地元の支援を受けるかたちで、沖縄県北部の国営海洋博公園に600億円を投じてテーマパークを新設する計画だった。
だが、事態は急変する。USJは2015年11月、米ケーブルテレビ大手、コムキャストに買収された。コムキャストは今年4月末まで全株を取得してUSJを完全子会社にする。コムキャストの傘下に入ったUSJは、沖縄進出計画を白紙撤回した。経営資源を大阪に集中して大競争時代に備えるためだと説明している。
森岡氏は退任する理由を、こう語っている。〈会見で「これだけはやりたかった」と吐露したのが沖縄進出だ。「アジアで最も集客力のあるエンターテインメント産業をつくる」というのが夢だった。(日本経済新聞電子版16年12月17日付)〉森岡氏はマーケターとして一からテーマパークを立ち上げたかったが、経営陣が交代したため、その夢は破れた。最大の理解者である大株主のGSとCEOのガンペル氏もいなくなり、森岡氏はUSJを去った。「V字回復の立役者」の森岡毅氏が退社したことで、USJが今後も集客増を続けることができるかに懸念がささやかれている。
【森村 和男】
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