警察庁・参院選でのローン・オフェンダー専門部署を設置するなど対策を強化

 2022年7月の参院選の街頭演説中に発生した安倍晋三元首相が銃撃を受けた事件からまもなく3年を迎える。この事件をきっかけに、組織に属さず単独でテロ行為などを行う「ローン・オフェンダー(LO)」について、警察庁は新たな専門部署を設置するなど参院選における警備体制の強化を図る。部署名は「LO脅威情報統合センター」(LOセンター)で、警視庁と埼玉・千葉・神奈川各県警の公安部門から集められた捜査員が配置される。

 これまで警察は、公安部門において過激派や右翼団体、オウム真理教(後継団体)、外国のスパイ活動など、組織・団体を念頭に情報収集や監視、必要に応じて関連施設の捜索や検挙を行い、治安維持に努めてきた。

 しかし、安倍元首相が銃撃された事件、23年4月に衆議院和歌山1区における補欠選挙に際し、応援に訪れた岸田文雄首相(当時)が鉄パイプ爆弾を投てきされた事件、24年10月に自民党本部に火炎瓶が投てきされ、首相官邸に車が突入する事件が起こるなど、立て続けに「ローン・オフェンダー」によるテロ事件が起きた。

 福岡県においても、5月に60代の男性が自民党県連の事務所のドアに赤いスプレーを噴霧した事件が起きた。物価高騰などを背景に政治に対する不満や批判が強まるなか、要人や候補者に対するテロ事件に発展する可能性が今後もあり得るとみられる。

 事件の前兆を把握するためには民間からの情報提供が重要となる。警察は不動産業者に対し、管理物件の部屋から薬品や火薬などの異臭が確認されたり、異常な音が聞こえたりする場合など連絡するよう要請している。

 組織に所属しない個人の動向を把握するのは困難だが、警察庁はサイバーパトロールによるSNS投稿の分析などで得た前兆情報や、制服警察官による職務質問、生活安全部門など公安部門以外から上がってきた情報を「LOセンター」に集約し、全国の都道府県警察と共有し、広域での選挙警備を行うことで、未然に不測の事態を防ぎたいと考えているようだ。

【近藤将勝】

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