2024年12月23日( 月 )

決して見過ごせない!久留米市のずさんな建築確認(2)~判明した数々の瑕疵

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数多くの「法令規準違反」と「仕様指定違反」

 「新生マンション花畑西」は、設計における構造計算の偽装、不適切な設計が行われていたが、これらの問題点が久留米市の建築確認で見逃され、是正されることなく、建築確認済証が交付された。さらに、施工を請け負った鹿島建設のずさんな施工ミスによる数々の瑕疵が判明した。

 設計事務所(木村建築研究所)による設計の瑕疵の大半は、構造計算の偽装によるもの。偽装は、単純な手口であったが、建築確認審査を行った久留米市は、この単純な偽装をすべて見逃し、建築確認済証を交付した。その結果、耐震強度を35%しか有していないマンションが建設されたのである。

 専門家による構造検証の結果、耐震強度が35%であることが判明(施工業者である鹿島建設の施工ミスや不具合を考慮した現実的な耐震強度は10%前後)した。同マンションの管理組合は、2013年当初から、久留米市に救済を求めていたが、同市は、建築確認審査において設計の偽装を見逃した責任を認めないばかりか、管理組合側の悲痛な訴えに対し、費用負担などを考えれば『無理難題』といえる、別の方法による構造検証や、高次元の耐震診断を要求。管理組合および区分所有者にさらなる経済的負担を強いて、時間稼ぎを図り続けた。

 区分所有者たちは、14年6月、まず、施工業者の鹿島建設と設計会社の木村建築研究所を相手取り、建替えを含めた損害賠償を求める訴訟に踏み切った。そして、久留米市に対しては、その無責任かつ市民生活の安全を度外視した姿勢に対し、調停を経て、15年3月、建替え命令を求める訴訟を提訴。その後、16年1月には、久留米市に対する損害賠償請求(時効期限前)を提訴した。

 裁判で原告側から指摘された、同マンションの建築確認審査における久留米市の瑕疵は以下の通り。

■法令規準違反
・建築基準法第20条に規定されている構造耐力
・建築基準法施行令第38条2項に定める異種基礎併用の禁止
・建設省告示昭55建告第1793号に定める地盤種別
・建築基準法施行令第47条、同67条に定める継手・接合
・建築基準法施行令第77条に定める柱の帯筋比
・鉄骨鉄筋コンクリート造構造計算規準・同解説(日本建築学会)第7条に定める柱の帯筋の間隔の規定
・鉄筋コンクリート造構造計算規準・同解説(日本建築学会)第15条に定める柱の帯筋の間隔の規定
・建築基準法施行令82条に定める保有水平耐力計算

■仕様規定違反
・建築物の構造関係技術基準解説書384頁の規定に違反
「(2) 鉄骨を非埋め込み柱脚とする場合で、その脚部に曲げ降伏が発生する場合は良好な曲げ靭性が得られるとは言い難いため、その柱を鉄筋コンクリート造とみなしてDsを算定する」

・建築物の構造規定(日本建築センター)78頁の規定に違反
「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の1階鉄骨柱の柱脚がピン柱脚の場合、柱脚の鉄量(鉄筋とアンカーボルトの断面積の合計)が、柱頭の鉄量(鉄骨と鉄筋の断面積の合計)と等量以上にしなければならない」

・東京都建築構造設計指針235頁「8-3-1 柱と梁の仕口構造」の規定に違反
1)柱コンクリート断面の中心と、鉄骨の中心がなるべく一致するような組立てとする。
2)柱・梁の接合部は、応力伝達機構が単純明解であること。
3)鉄骨断面は原則として自立できる断面とする。

 「新生マンション花畑西」の建築確認申請に添付された構造計算書には、上記した数多くの「法令規準違反」と「仕様指定違反」があった。これらの不備をただの1つも指摘できなかった建築確認機関(久留米市)が実在していることは、驚愕の事実とも言える。

(つづく)
【伊藤 鉄三郎】

 
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