旧統一教会や関連団体と福岡保守政界の知られざる関係性(前)

 東京高裁は4日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散を命じた。安倍晋三元首相の事件後、自民党などと教団の関係が大きくクローズアップされたが、第三者委員会の調査が行われることなどはなく、全貌は明らかになっていない。旧統一教会と福岡政界は、長年にわたり深い関係があった一方、保守勢力の間では教団への批判も根強かった。なぜ被害の拡大を防ぐことができなかったのか。

17年前にもあった解散命令のチャンス

 4日午後3時過ぎ、衆議院第1議員会館の会議室で、旧統一教会の解散命令が東京高裁で決定したことを受け、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の記者会見が行われた。

 この日は午後1時と2時にも、それぞれ全国統一教会被害対策弁護団と全国弁連の会見が都内で開かれており、それを終えて議員会館での会見が始まった。司会は、長年にわたり教団やオウム真理教の問題に取り組んできた有田芳生衆議院議員(中道改革連合)が務めた。

 会場には記者クラブに属さない独立系メディアの記者も多く集まった。出席した弁護士は山口広弁護士や紀藤正樹弁護士のほか、事務局長の木村壮弁護士ら5人だった。

会見を行う全国弁連の紀藤正樹弁護士(一番左が山口広弁護士)
会見を行う全国弁連の紀藤正樹弁護士
(一番左が山口広弁護士)

 会見内容は多くのメディアが報じており、重なる話が多いのでそちらをご覧いただきたい。

 質疑応答でネットメディア・Arc Times(アークタイムズ)の記者が、被害の拡大について「メディアの責任も大きい」と指摘した。

 これを受けて山口弁護士は、「確かにメディアの問題についてはですね、いつも歯がゆい思いをずっとしてきました。正直いうと、もうそんなもんだなと、もうあきらめるしかないなというぐらいに思っていることも多々あります」と述べたうえで「たとえば新世事件という統一教会の販売会社が組織的にその販売活動をやって、悪徳商法で資金を集めていたという問題がありました。公判請求まで行ったわけですよ。主犯の2人が逮捕され刑事公判にまでなりました。これはそこそこ扱ってはくれたんだけど、その後はスーッと消えて報道はされなくなった」と振り返った。合同結婚式の問題や霊感商法などの問題も一時的には注目されるが、その後の深掘りや継続的なウォッチングがなかったという。

 山口弁護士が述べた新世事件とは、2009年6月、東京都渋谷区で印鑑販売を営む統一教会の関連団体である(有)新世の社長・幹部・販売員5人の計7人が、特定商取引法違反(威迫・困惑)の疑いで警視庁公安部に逮捕された霊感商法事件である。

福岡でも霊感商法摘発

 同じ時期、全国で同様の事件が警察の摘発を受けていた。福岡でも、(有)サンジャスト福岡(旧・幸運堂)が、08年12月「先祖の霊があなたの人生を悪くしている」「購入しなければ地獄に落ちる」などと不安をあおって、福岡市中央区在住の女性に水晶の玉や彫刻など600万円以上の商品を買わせたとして特定商取引法違反(威迫・困惑)容疑で家宅捜索を受けた。09年5月には、統一教会信者で在日韓国人の従業員が逮捕され、博多区にあった統一教会福岡教会などが家宅捜索を受け、サンジャスト福岡は罰金刑を受けている。

 当時、県議会警察委員会の委員長を務めていたのは、現在、高市政権の首相補佐官を務める衆議院議員・井上貴博氏だった。井上氏は首相補佐官就任前に記者に対し「県議時代に警察委員会委員長を務めた関係から、統一教会など反社会的な団体とはかかわりをもたなかった」と述べていた。

 この事件は、09年6月に国家公安委員会の定例会議においても報告されている。現在もネット上で閲覧可能な議事録には「福岡県警察は、5月7日、統一教会と緊密な関係にある(有)サンジャスト福岡の社員1人を特定商取引に関する法律違反で通常逮捕した」とあり、公安警察のトップである警備局長が警察庁長官や公安委員の前で報告するほどの事件であった。

 捜査にかかわった県警関係者は「裁判所の捜査令状を得たうえで、教団施設を含む関係先を家宅捜索した」と語る。別の警察OBは「我々は、被害者を出さないために統一教会の監視や摘発を行ってきた」と述べるなど、警察当局は長年にわたり旧統一教会を問題視してきたことがうかがわれた。

 山口弁護士は「もっと早く解散命令を出していれば」と悔しさをにじませた。新世やサンジャストの事件後に解散命令を出す機会もあった。しかしメディアを含めて世論が盛り上がらず、コンプライアンス宣言で一区切りがついたと受け止められた。その後も献金などによる被害が続くことになった。

 記者の手元に一冊の冊子がある。『月刊治安フォーラム』(09年10月号)。公安警察官を対象とする専門情報誌である。発行元は警察官昇任試験問題集などを発行する(株)立花書房。同社の出版物には現職の警察官僚などによる専門書のほか、『警察学論集』や『治安フォーラム』などには警察官僚やOBが本名やペンネームで寄稿している。

 09年10月号の「治安フォーラム」に塚原悦志というペンネームで寄稿された「霊感商法と統一教会(下)」に「サンジャスト福岡代表宅からはサンジャスト福岡名で文鮮明夫妻あての記載がある販売決意文が見つかっている。この資料などはサンジャスト福岡の活動が文鮮明氏の経済第一主義に直接貢献するものであることを如実に示す資料といえるだろう」としたうえで、「相次ぐ警察の事件摘発を受け、統一教会側は、政治家を通じて事件化を阻止しようとしたとの話があるが、もしこれが事実とすれば言語道断である」と政治家を通じて警察の捜査に圧力をかけたことを指摘している。

 最後は「自らの非違を真剣に反省することなく、しばらくの間隠忍自重すれば、やがて霊感商法再開も可能と考えているならば、この教団の運命も自ら明らかであろう」と解散命令を予想したような一文で締めくくられている。

福岡保守重鎮が警鐘

 前出のように井上議員のように教団と接点をもたなかった議員がいた一方、22年9月の自民党の調査でも複数の福岡県選出の自民党国会議員と教団の接点が明らかになり、地方議員とのかかわりも報じられた。

 では、自民党を支えてきた保守勢力はどうだったのか。

 平成18年(2006年)4月に保守系団体・日本会議福岡の役員やその他の保守系活動関係者に対して一通の文書が郵送や手渡しのかたちで配布されている。

福岡保守系団体に配布された文書
福岡保守系団体に配布された文書

 「資料(「これが統一教会の秘部だ」)の送付について」と題する文書には、旧統一教会の関連政治団体「国際勝共連合」が日本会議福岡など保守系に接点を持つ動きがあることを紹介したうえで「統一教会は、私共日本人と皇室観、歴史観、国家観が異なる似非愛国団体であります」と指摘し、「勝共連合(統一教会)が保守系団体に近づく一番の目的は資金の確保であり、そのための幅広い人脈づくりであります」と警鐘を発している。

 中心となって文書を作成したのは、日本会議福岡の時局部会長(当時)・辻幸男氏である。辻氏は学生時代から民族派学生運動に取り組み、卒業後は建築関連企業の役員を務めながら保守運動に取り組んだことで、福岡政界でも知られた重鎮であった。北朝鮮に拉致された日本人を救出する福岡の会の会長も務めるなど人権問題にも造詣が深く、厚生労働省の公正採用選考人権啓発活動で表彰を受けたこともある。

 辻氏は学生時代、新左翼や民青(共産党系)と対峙した一方、旧統一教会の原理研究会とも討論を行い、社会人となり企業に勤めながらも運動を続けるなかで、教団や勝共連合に対しては毅然とした対応を貫いていた。辻氏は自民党系の地方議員にも「勝共に取り込まれないように」とくぎを刺してきた。辻氏らの取り組みがあり、福岡の保守層の間には教団の接近を警戒する空気が形成されていた。

(つづく)

【近藤将勝】

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