決して見過ごせない!久留米市のずさんな建築確認(4)~無視された危険性
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建物の危険性にはお構いなし
「新生マンション花畑西」の世帯数は92世帯。裁判の原告は61名であり、3分の1の世帯は原告に加わっていない。これら原告以外の区分所有者の持分に対して、行政が、建物の建替を命令することは難しいという点は理解できる。個人の財産に対し、取り壊しを命じることは財産権の侵害にも成りかねないので、判断が慎重にならざるを得ないということだ。
しかし、その建物の耐震強度が35%しかなく、大地震により倒壊の危険性があり、近隣の市民までも巻き込む恐れがあることを原告が立証している一方、被告・久留米市は「建物は安全」ということを立証していない。久留米市の反論は、「建築確認通知書に綴じられている図面や構造計算書が本物かどうかわからない」という苦し紛れの詭弁であったが、裁判所は、「除却」・「建替」という判断を下すことを避けたいためか、久留米市の詭弁を採り入れた格好となった。被告である久留米市側に偏った判決は、まさに「判決における偽装」と言えるのでないだろうか。
判決を言い渡した裁判官に対し、原告側から浴びせられた怒号は、原告の心情を痛切に訴えたものだ。判決は、行政が除却や建替を命令することを認めなかったが、「このマンションが安全である」と認めてもいない。原告からすれば、「耐震強度が35%しかない危険なマンションで生活を続けろ」と、司法が命じたようにも受け取れる。
そのような判決における裁判所の判断の大部分には、裁判官の誤った解釈があり、被告側に偏ったものとなっている。代表的な誤解を挙げると下記の通り。
(1)保有水平耐力計算におけるDs値は、建築基準法に保有水平耐力計算が規定された1956年から明記されており、裁判所が「平成19年以降の証拠だから認められない」と切り捨てていること。
(2)柱の帯筋(フープ筋)に関する原告の指摘について、判決は、日本建築学会規準を、「建築学会の自主的な定め」と断定。建築学会規準は、建築確認審査において審査の指標とされており、これを否定することは、建築確認制度、行政そのものを否定することに等しい。
行政が定めた建築確認制度を司法が否定すれば、建築設計に携わる者は「何を根拠に設計を行えば良いのか」と、審査する側も「何を根拠に審査をすれば良いのか」という混乱を来たすことになる。機会を見て、行政側の意見を聞く予定であるが、国が定めた建築確認制度を揺るがす大問題になることは間違いない。(3)判決は、階段を仕切る雑壁(W12=厚さ12cm)を「耐震壁」と断定し、「耐震壁があるから、梁が施工されていなくても問題ない」と根も葉もない独自の見解を述べている。被告でさえ、このような理論を主張していない。
この壁は、柱と梁で囲まれた架構内の壁ではないため、「耐震壁」として扱うことは絶対に不可能。壁厚としても「耐震壁」とはなり得ないし、仮に「耐震壁」であるとすれば壁符号は「EW12」などとなっていなければならない。裁判所は何を根拠に、単なる仕切り壁である雑壁を、強引に「耐震壁」と決め付けたのであろうか。「耐震壁」の意味を理解していない裁判所が、「耐震壁」でない単なる雑壁を「耐震壁」と決めつけ、建物の危険性を訴える原告の主張を切り捨てることは、司法として許されざることである。技術的な問題を扱う裁判では、専門知識(この場合、建築に関する知識)を有する有識者を専門委員として、意見を聞くことが一般的だ。現に、「新生マンション花畑西」では、施工業者や設計事務所に損害賠償を求めている裁判において、建築に関する専門委員に意見を聞く場が設けられた。しかし、久留米市に関する裁判では、専門委員に意見を聞く場を設けられなかった。このため、担当の裁判官が、誤った解釈や独自の見解に基づいて判断されたものと思われる。
(つづく)
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