2024年11月05日( 火 )

決して見過ごせない!久留米市のずさんな建築確認(6)~建築確認無法地帯

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建築確認無法地帯・久留米市

 判決は、久留米市の主張を受け入れた形になったが、受け入れられた久留米市の主張は、「当時の建築確認は適切だった」「建築確認通知書の図面や構造計算書が本物かどうかわからない」などといった、だれが考えても筋の通らない主張だった。加えて、判決は、法令を誤って解釈しており、建築確認の審査指標である学会規準を否定し、雑壁を「耐震壁」と決めつけるなど、被告さえも主張していなかった珍説まで展開している。

 法令規準を否定し、誤解や誤り、珍説により構成された判決は、久留米市にとって喜ばしい判決のように映る。しかし、この判決を読んで、最も衝撃を受けているのは、久留米市と施工業者・鹿島建設ではないだろうか。判決が、法令や規準を無視あるいは曲解し、建築確認制度を否定していることは、久留米市や鹿島建設が、最も理解できる立場にあるからだ。このことに久留米市が気付かないとすれば、本当に、久留米市には、建築技術を理解する能力が備わっていないということになる。鹿島建設は、建築技術的に、この判決の問題点を理解できるので、今後の原告側の動きを不気味に感じているはずだ。

 久留米市は、後に予想される“揺り戻し”を覚悟しておかなければならない。この判決は、建築確認制度を否定した判決となっているので、今後、久留米市の建築確認業務において、多くの矛盾が生じてくるのである。たとえば、現在の建築確認審査において遵守が求められている日本建築学会規準について、久留米市に限っては規準に従わなくても良いと理解される。保有水平耐力計算におけるDs値(構造特性係数)然り、柱の帯筋の規定然り、このようなことがまかり通れば、久留米市と国では、建築確認の内容が異なり、一種の治外法権状態となる。

 施工の不具合で損害賠償を請求されている鹿島建設にとっては、判決が、法令や規準をすべて否定して、強引に、行政の責任がないという内容になっている以上、自ずと、責任は設計事務所と鹿島建設にあると判断され、支払能力のある鹿島建設の負担となってしまう。
 判決が誤った解釈や誤解により構成され、久留米市にとって有利な内容であったことを、これ幸いと受け入れることは、たとえば、商品を買って代金を支払い、もらったお釣りが多いことを認識していたにもかかわらず、黙って持って帰るようなものであり、「泥棒」なのである。

 このようなことがまかり通れば、行政、設計事務所、ゼネコンのやりたい放題になる。鹿島建設が、図面に明記されている梁を30カ所も施工しなかったことさえも正当化されてしまう。
 久留米市は、原告が、4年前から救済を求めていたが無視し、「捨て子」にした。それでもなお、固定資産税を徴収し続けている。原告の1人は、「固定資産税を取るなら、せめて、マンションが安全であることを証明してくれ」と語る。「新生マンション花畑西」の分譲当時の住宅ローンは提携ローンとなっている。耐震強度がなく、試算価値が認められないマンションに提携ローンを設定した2つの銀行に対して、区分所有者から「抗弁権の接続」を申し立てる動きも見られる。

(つづく)
【伊藤 鉄三郎】

 
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