2024年12月23日( 月 )

決して見過ごせない!久留米市のずさんな建築確認(8・終)~市民全体の問題

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鹿島建設と久留米市の密接な関係

 裁判長の「このマンションの区分所有者が、施工業者の鹿島建設や設計事務所の木村建築研究所に損害賠償を請求して提訴している、もう1つの裁判において、建替えなり、補強なり、損害を賠償してもらえばいいのではないか」と受け取れる発言が、原告の怒りに油を注いだ。

 鹿島建設は、久留米市発注の公共工事を多数受注してきた。最近では六ツ門の再開発である久留米シティプラザを手がけている。過去にも大型公共工事を多数受注しており、久留米市と鹿島建設との深い関係は、市民の間でも公然の事実と認識されている。「新生マンション花畑西」の管理組合が、鹿島建設の施工の不具合を久留米市に報告し、何度、救済を求めても久留米市が無視し続けた理由は、市民よりも鹿島建設を優先しているからにほかならない。

 原告の怒りは、鹿島建設にも向けられており、「6月に開催予定の株主総会に押しかけ、鹿島建設の非道を、株主に訴えよう」という意見も出ているという。施工業者の鹿島建設と設計事務所の木村建築研究所に損害賠償を請求している裁判は、4月14日に弁論準備が行われたが、前日の久留米市に関する裁判の判決に、誤解や誤った判断が多いことについて、原告から問題提起され、次回期日は6月22日と決まった。施工業者らを相手取った裁判の行方に注目が集まる。なお、原告が久留米市に建替命令義務付を請求した訴訟の判決を受け、原告の管理組合および区分所有者は、4月16日、控訴する事を決議した。

大地震が発生してからでは遅い

 1審の裁判を通じて、重大な問題が浮上している。それは、久留米市が建築確認における審査能力を欠いていたため、このマンションの場合と同じく、設計における誤りや偽装を是正させることなく、建築確認を認め、誤りや偽装が是正されなかった建物が建設されていることである。その数は天文学的数字に上ると言っても過言ではない。大地震が発生した場合、久留米市内のいたるところで、建物の被害が発生し、人的な被害も避けられない状況となる。

 久留米市にある「水縄断層」で地震が発生した場合、「マグニチュード7.2、死者1万482人、全壊2万5,572棟」という予想が報道されている。耐震強度が35%であるマンションがM7.2の地震に見舞われた場合、甚大な被害が生じることが容易に想像できる。久留米市の建築確認が、ずさん極まりなかったという事実を考慮すれば、予想の死者数1万人や全壊2.5万棟の何倍もの被害が生じる可能性は大いに考えられる。

 熊本地震から1年。大地震が発生し甚大な被害が生じて初めて、地域係数の問題がクローズアップされたように、久留米市を震度6強の地震が襲った場合、多くのマンションやビルが倒壊し、尊い人命が奪われて初めて、久留米市のずさんな建築確認審査が世に問われるようであれば手遅れである。

 久留米市は、今回の判決を、責任を回避できた内容の判決として受け止めるであろうが、残された「ずさんな建築確認のため、強度不足の建物が無数に存在する」という大問題を、久留米市が解決しなければならない。今回の判決により、その実態を知った市民から、久留米市に対して、問い合せが相次ぐであろうし、法的手段を講じるケースもあるかもしれない。この問題は、久留米市民の生命と財産に関わる非常に大きな問題である。久留米市が、市民のために、問題解決に真剣に取り組むことを望むものである。

(了)
【伊藤 鉄三郎】

 
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