2024年12月22日( 日 )

ふくおかFGと十八銀行の経営統合の行方は

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 昨年の2月26日、ふくおかFGと十八銀行は、経営統合することで基本合意書を締結したと発表し、以下のスケジュールを示した。

・2016年8月     両社取締役会で決議し、最終契約を締結
・2016年12月     臨時株主総会
・2017年4月1日   株式交換効力発生日(経営統合日)
・2018年4月     十八銀行と親和銀行の合併

 しかし最終契約締結予定日1カ月前の7月8日、公正取引委員会が独禁法上の問題を提起したことから、赤信号が点滅することになったのだ。

 これによりふくおかFGと十八銀行は今年1月20日、公取委の審査長期化に伴い統合時期を10月1日まで半年延期すると発表。3月31日、NetIB-Newsで「白紙に戻る?~ふくおかFGと十八銀行の経営統合」を掲載。

 今やふくおかFGと十八銀行の経営統合は公正取引委員会と金融庁が対決する政治問題となっており、政府も手が出せないというのが現状ではないだろうか。

 官対官が綱引きすることになったふくおかFGと十八銀行の経営統合。これが認められるには、十八銀行の店舗及び行員を西日本シティ銀行傘下の長崎銀行に譲渡する必要がある。どこまで譲渡するかはわからないが、その規模次第でこの経営統合は白紙に戻ることになりそうだ。

 と結んでいた。

その後の動き
◆4月17日、十八銀行の森拓二郎頭取は「構造的措置としてシェアを落とすことに踏み込まないといけない」と債権譲渡の可能性を示唆。今後県内9カ所で説明会を開催し、理解を深める方針を明らかにしたという。
◆それを受けて、ふくおかFGの柴戸社長も4月21日に記者会見し、10月に半年延期した経営統合について、「現時点で、公正取引委員会の理解が得られていない。債権譲渡に踏み込まざるを得ない状況になってきた」と述べたと伝えられる。
 さて、ここでなぜ公取委が難色を示しているのかを探ってみることにしたい。

経営統合の問題点
~長崎県内の貸出金シェアが7割(政府系金融機関を除く)に達することが独禁法に抵触~
 ただ問題はこれだけではない。長崎県は離島が多く、地域によっては100%のところもあるのだ。【別表1】の「長崎県の地域金融機関」を見ていただきたい。

この表から見えるもの
◆対馬市から東彼杵郡までの4市2郡の人口は16万3,000人。しかし親和銀行と十八銀行の支店しかない。もし経営統合がこのまま認められれば、その一年後に親和銀行と十八銀行が合併する予定であり、他の金融機関がない状況はそのまま継続されることになるのだ。
・独禁法上から見れば、十八銀行は対馬支店・壱岐支店・平戸支店・松浦支店・佐々支店の営業権そのものを譲渡することになりそうだ。
・譲渡する先は西日本FHの子会社である長崎銀行か、たちばな信用金庫になる。しかし金融庁は地銀の経営統合を優先させており、債権譲渡先は長崎銀行に絞られることになりそうだ。

◆佐世保市には準地元の九州ひぜん信用金庫が営業部と6支店を持つが、長崎銀行は佐世保支店しかなく、今後も継続していくためには十八銀行の2~3支店の営業権譲渡が求められることになりそうだ。支店のない雲仙市、五島市、南松浦郡も営業権譲渡が条件となると見られる。

今後の課題
・今回の経営統合については、市民の暮らしを守るために動く公取委の言い分の方が正しいように見える。従って、この経営統合の可否は、どこまで公取委を納得させるかにかかっていると言えるのではないだろうか。
 ゼロ金利政策や人工の減少による地方銀行の経営そのものが厳しくなってきている現状を踏まえ、経営統合を推し進めている金融庁。
 ただ債権譲渡で済む問題ではなくなってきているのも事実。この件は金融庁と公取委の、官と官とのメンツ争いで泥沼化の様相を呈しており、「行員・店舗・債権」の「ヒト・モノ・カネ」を譲渡しないと、この経営統合は前に進まないように見える。
 ひとえにふくおかFG及び十八銀行が、どこまでギリギリの交渉を進めることができるかにかかっており、それを公取委が承認すれば今後予定される地銀の経営統合の指針となる。柴戸社長と森頭取は大きな責任を負っていると言っても過言ではない。

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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