2024年12月23日( 月 )

顧客の海外進出サポートから始まった、ハワイ市場の半分を制したパッケージング(後)

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福岡パッケージ(株) 代表取締役社長 庄嶋 毅 氏

商慣習や生活習慣の違いを乗り越えられるか

美しいハワイの夕日

 アメリカでは、容器に関しては発泡スチロール製のものが主流。これに対応していく必要がある一方で、ワシントンD.C.やサンフランシスコ、ニューヨーク州など、複数の市や州では発泡スチロール製容器の使用が禁止されている。ハワイでプラスチック製容器が禁止された理由と同じで、環境への配慮からの措置だ。今後、他の市や州にもこの動きは広がっていく可能性は高い。もちろん法整備への対応以外にも食文化への対応も必要だ。

 「容器に関して、日本とアメリカの最大の違いは『仕切り』にあります。日本では主食の米飯があるうえに、おかずや漬物があり、最低でも4つは仕切りが必要になります。対してアメリカでは、仕切りは多くても3つです。仮にアメリカの容器で日本風の弁当を作ろうとすると、ご飯を入れた後は彩りを意識した細かな配置は難しくなります。そうなると、日本のお弁当がいいという現地日系企業に対しては、日本式の弁当容器の方が有利です。ただし、その優位性だけで日本製の弁当容器が市場で存在感を増すことは難しいでしょう。アメリカの弁当文化において、中身のバランスを意識することが一般レベルで浸透すれば、自然と日本の弁当容器も流通していくのではないでしょうか」(庄嶋代表)。

 同社は、アメリカ市場において直販業者、バイヤーとして活動を展開している。規模を拡大させていくうえで、人員も増やしていかなければならない。今は派遣した海外事業部長1名と、現地企業買収時に社員としてすでに働いていた人員で運営されている。しかし、高齢の社員が多く、今後は社員の若返りによるノウハウの承継を急ぐ必要があるという。

 「社員の若返りは必要なのですが、雇用条件が日本とは違いますので、簡単にはいきません。ハワイの例でいうと、給与は月2回払い。支払い額としては日本と大差はないのですが、時給ベースで見たときには高く感じられます。時給は1,000円からで、2020年には1,500円以上に引き上げられることが決まっています」(庄嶋代表)。

 最低賃金は日本同様、上昇傾向にあるようだが、働き方は日本とはまったく異なっている。
 「弊社の場合でいうと、社員は午前7時~7時半の間に出社し、午後4時には退社します。退社後は、アルバイトなどの副業をしているようです。現地ではそういう風習が根付いているのです。また、ボーナスという制度はありません。定年もありませんので、退職金もありません。大企業で毎月個人の給与から差し引くかたちで積み立てられている場合は別ですが。雇用保険は、ハワイに関しては週20時間以上働く場合には必ず入らなければなりません。負担割合や条件などは、各人の選択によって異なります。歯医者を付けるか付けないのかなどです」(庄嶋代表)。

 給与体系、保障の在り方など、海外市場で活動する際にはそれらの違いを受け入れる、柔軟な姿勢が求められる。

新たな販路から生まれる計画

 「きっかけは偶然でしたが、良い話をいただいたと感謝しています。福岡本社からハワイに容器を輸出すれば、それを契機として本社の売上も伸ばせます。また、ハワイでは日本、中国、台湾などのメーカーから容器を仕入れているのですが、仕入れている分だけ、こちらからも容器を納品させてもらえないかと考えています」(庄嶋代表)。

 これまでも工場に3D対応のCADシステムやサンプルカッターなど最新の機械設備を導入するほか、人気モデルとコラボレーションしたデザインパッケージングの提供を行うなど、新しい試みを続けてきた同社。アメリカに拠点を得たことで、その企画力と実行力は、グローバルな広がりを見せていくことになるだろう。
 「今後は、アメリカから日本へ何か輸出できるものを作り出していくことが必要になってきます。そうすることで、為替変動が起きた際にもバランスを取ることができるようになります」(庄嶋代表)。

 顧客からの相談に真摯に応えるなかでの「一期一会」が、同社に新たな事業基盤をもたらし、さらなる飛躍の契機となっている。海外進出とその成功には、綿密な戦略ももちろん必要だが、「巡り合わせ」も大きな要素といえそうだ。

(了)
【代 源太朗】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:庄嶋 毅
所在地:福岡県糟屋郡久山町久原工業団地2843
設 立:2000年2月
資本金:1,000万円
売上高:(16/12)14億5,676万円

<プロフィール>
庄嶋 毅(しょうじま・つよし)
1968年12月、福岡県生まれ。福岡大学卒。91年4月、地場広告代理店の(株)三広に入社後、93年にフクパグループに入社。2000年2月、父・厚生氏より事業部を買い取り、福岡パッケージ(株)を設立し、現在に至る。趣味はテニス、ゴルフ。

 
(中)

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