久留米経済人のホンネ「本当は本村会頭に引退してほしい」(中)
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久留米商工会議所 会頭 本村 康人 氏
汗水たらし借金返済 なぜ本村商店だけが
「(本村商店は)普通なら倒産していてもおかしくないですよ。しかし、それが(銀行に)守られた。久留米商工会議所の会頭の会社だからですか?たまったもんじゃない!」と憤りを隠さないのは経営者Bさん。「私はずっと久留米で事業をし、倒産の現場を何度も目の当たりにしてきた。そうならないために毎日せっせと汗水流して働いている。倒産した社長が債権者に涙で謝罪し、土下座する光景を見れば、なおさら気を引き締めて社業に取り組もうと励みにもなる。本村会頭も真剣に社業に取り組んでおれば、今回のような事態になることはなかったはずなのに」と憤る。本村会頭の久留米愛は痛いほどよくわかるが、社業に専念し、衰退する酒卸に執着するのではなく、関連業種や他業種に進出するなどのテコ入れが経営者として必要だったはず。会頭職も結構だが、社業に専念していれば会社は銀行管理にならずに済んだ。
そもそも債権放棄は、「倒産することで地域の日常生活に支障をきたす」「多くの失業者を発生させる可能性がある」という条件を満たす企業に適用されるもの。だが、酒卸の本村商店が倒産したところで、失礼ながら大きな社会的影響を与えるとは考えられない。メインバンクである筑邦銀行がそれに応じたのは、そんな非難を受けるリスクを覚悟したうえのことと推測する。事実、同行の行員が取引先から、「うちも(本村商店のように)債権放棄に応じてくれよ」と半分本気、半分冷やかしとも取れる要請をされることもあったという。真面目に働いている銀行員にとっては迷惑な話だろう。
拒否理由が二転三転 筑邦銀行の矛盾
それではなぜ、筑邦銀行は本村商店の債権放棄に応じたのか?以前から取材を重ねているが、同行は終始ノーコメントを貫く。上場企業(福証)としてのコンプライアンス意識が問われるところだ。よほど本村商店の一件に触れられたくないのか、業界の展望などについて取材する弊誌のトップインタビュー企画にも不自然な対応をみせた。今年2月、弊社は同行の佐藤清一郎頭取に対しインタビュー取材を試みたが、残念ながら断られた。同社広報部は2月の時点では頭取のスケジュール調整ができないという理由で取材を拒否したが、4月に再度取材申し込みをしたところ、「弊社は大手新聞、テレビ以外の取材は一切応じない」という理由で断ってきた。2月の取材拒否の理由と4月の理由では矛盾が生じる。「ならばなぜ、2月の時点で取材ルールに基づいた対応を行わなかったのか?」と質問すると、同行の広報は「(ルール自体を)忘れていた」というお粗末な回答をしたうえで謝罪した。地域を代表する銀行の広報部が自分の組織のルールを忘れているとはまったく信じがたいが、明らかに頭取に取材をさせたくないという銀行側の思惑が透けて見える。同行の佐藤頭取は他の地場経済情報誌の取材には対応しているだけに、よほどうしろめたいことでもあるのではないかとますます疑念が強まるばかりだ。
本村商店が銀行によって守られた背景には、久留米シティプラザの誕生があると断言してよいだろう。議員ならず経営者からも、久留米シティプラザは「強烈なリーダーシップを持つ人物でないと実現できない」と言われ、その適任者が本村会頭であったことは周知の事実だ。ただ、同プラザ誕生が計画されていた時期、会頭の所属企業の本村商店が経営危機に陥っていた。仮に同社が倒産すれば、それこそ即刻会頭職を退場させられることは免れなかっただろう。「久留米シティプラザが開業するまでは、本村氏は会頭職に留まらなければならない」という理由から、銀行に対し外部から何らかの圧力があったと考えるのが合理的ではないか。仮に銀行に対して影響力のある企業または団体が束となり、取引撤退をチラつかせた…とすれば合点がいく。しかし、このような圧力があったかどうか、真相は闇に葬られたままだ。
昨年、本村氏が本村商店の取締役会長を退き、久留米業務サービスの取締役会長となった後の議員総会でのことである。氏は「私は、ばさらか(とても)ついとりますけんね」と発言した。「ついている」という言葉が「借金を棒引きしてもらい、会頭職に留まることができた」ことを指しているのかはわからないが、この発言を聞き、怒りが収まらなかった議員は少なくなかったようだ。そのうちの1人が本村会頭に抗議文を送ったところ、会頭が激怒しその議員を首にしたというまことしやかな噂まで飛び交っている。債権放棄を「ツキ」という曖昧な言葉によって表現したのかはわからないが、命がけで会社を守っている経営者たちがすんなり聞き流せる言葉ではない。
(つづく)
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