菅野完氏をめぐる民事訴訟判決について思う
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大阪に住んでいたころ、今はなき「サイキック青年団」(ABCラジオ)を愛聴していた。ある団体の怒りを買って打ち切られたこの番組のテーマは「邪推」だった。邪(よこしま)な推(おもわく)で見る者の目にだけ、時に真実が映るというがしかし、一般的にこうした行為は「ゲス」とよばれる……。
訴えられた菅野氏
東京地裁(天川博義裁判官)は昨日、著述家の菅野完(たもつ)氏に対して、女性に対して無理やり性的な行為に及んだとして、110万円の慰謝料支払いを命じた。
菅野氏は、15万部のベストセラーとなった『日本会議の研究』(扶桑社/2016年発刊)の著者として知られ、最近では森友学園の国有地払い下げ問題をめぐってテレビに出演するなど、一躍「時の人」として脚光を浴びていた。
その菅野氏になにが起きたのか。
詳細をつづる弁護士のブログ
原告の女性(Xさん)は、Xさんの自宅で2012年7月9日に、菅野氏に「無理やり体を触られた」ために精神的苦痛を受けたと主張しており、菅野氏の行為が不法行為にあたるとして220万円の損害賠償を求めていた。菅野氏は「性的暴行ではない」「すでに社会的制裁を受けた」として慰謝料の減額を求めていたが、判決では「(社会的制裁の)証拠がない」として退けられていた。
かねてより敵の多い菅野さんの「敗北」だけに、ネット上ではコメントが相次いだ。
ところで、今回の損害賠償請求訴訟で菅野氏の代理人を務めた三浦義隆弁護士は、判決同日に自身のブログを更新して、「性的暴行」当日から判決までに起こったことをまとめている。
三浦弁護士によれば、つまり、
(1)菅野氏は「Xさんも自分のことを好きなはずだ」という勘違いのもとでXさんに「抱きつく」などの行為におよんだ
(2)菅野氏は行為を反省しており、最初からXさんの被害回復を望んでいた。三浦弁護士へ依頼する際に謝罪文も用意していた
という。
女性側の不自然な動き
率直な感想としては、つくづく残念な事件だったというほかない。Xさんにとってはつらい体験だったし、菅野氏についても、フリーという立場では何よりも手に入れたかったであろう知名度と信頼という武器を失った。緻密な論理構成や現場からの視点、さらに「きちんと取材する」ことで生まれる文章がどれだけ強い力を持つのか、改めて教えてくれたという意味では、記者クラブ制度にあぐらをかく大手マスコミに刺激を与える存在だった。安倍政権に対する追及もこれから、という時期のニュースに落胆した方も少なくないはずだ。
しかし……。菅野氏の脇の甘さは置くとして、三浦弁護士の記述からうかがえるXさんやその周辺の動きは、どこか不自然にも映る。
・菅野氏に対して、損害賠償や謝罪のほかに、菅野氏のtwitterアカウントを削除し、今後もtwitterで発言しないことや、女性の権利問題に関する言論活動を今後しないこと、などを要求した
・言論活動の制約にこだわり、菅野氏側が示談金満額の200万円を提示したにもかかわらず受け入れなかった
・菅野氏が、反省文をネット上に掲載しようとしたところ、掲載を認めなかった
・一方で、この事件をブログなどでネット上に拡散する工作を行ったふしがある
当然、菅野氏の代理人であることを差し引いて読む必要がある。さらに、「男と女」の事件であることから、もしかしたらXさんの、他人にはうかがいしれない菅野氏に対する思いや憤りがあるのかもしれない。
ただ、セカンドレイプになりかねない危うさを冒しながらも、弁護士がここまで赤裸々に事情を公開したのはなぜなのか。「邪推」してくれといわんばかりのこの状況にキーボードを打つ手がとまらず、ここまで書ききってしまった。三浦弁護士は、控訴も検討しているという。
【小山田 浩介】
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