2024年12月23日( 月 )

寺島進発言についての反響~小山田の記事は言論弾圧か

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 「匿名」氏から、当サイト記事(寺島進の「朝鮮人」発言が物議~人気ゲーム『龍が如く』新作発表会で)にご意見が届きましたので、記者の考えを述べさせていただきます。2400文字近い長文のメールでしたので、ご意見のなかからテーマを抜粋して回答いたします。

「朝鮮」という言葉を使ってはいけないのか?

 〈匿名〉氏は、以下のように指摘しています。

 ――仮に筆者が朝鮮は自由に使ってイイが朝鮮人は条件以外は侮蔑でNOというなら、その支離滅裂とも思える論拠を開陳してほしい(おそらく、そんな問題整理などせず、単に朝鮮人だけを考えたのだろうが・・・)。

 まず確認しておきたいのは、記事で〈匿名〉氏が指摘しているようなことはいっさい書いていないということです。「朝鮮」はいいが「朝鮮人」は使ったらだめ……改めて読み直してみましたが、そのような箇所はどこにも見当たりませんでした。
 だとすれば〈匿名〉氏が誤読しているか、あるいはある種のバイアスがかかっているがゆえに、そういった主張をしているようにみえるのではないでしょうか。

 記者は記事中で
 「寺島氏の言葉は、社会で客観的にどう受けとめられたのかをもって差別性を判断すべき事柄である。逆にいえば、〈朝鮮人〉という言葉が使われているからすなわち〈差別だ〉ともならない、ということだ」
 と書いています。

 言葉はまず客観的事実として、いくつかの意味を持ちます。言葉が面白い(怖い)のは、誰が言うのか、いつ(歴史)言うのか、どのような場所で、どのような状況で発するのかによって言葉に乗せた思いや意味が変わってくるということです。
 AがBに対して「あんたのこと、嫌い」と言ったとして、AとBの関係性や状況によってこの言葉の意味が変わる、ということはわかってもらえるのではないですか?AはBに対して敵対意思を示したようにみえますが、AとBが恋人同士なら仲の良さの表現ですし、放課後の誰もいない教室なら、「ツンデレ」的な愛の告白なのかもしれません。

 さらに、言葉は「社会的にどう受け取られるか」という側面もあります。たとえば、AがBに対して「あの人、朝鮮人だよ」と言ったとします。どうです、心がざわざわしませんか。〈匿名〉氏はもしかしたら、「朝鮮人に朝鮮人と言ってなにが悪い。ただ事実を言っただけじゃないか。アメリカ人にアメリカ人と言うのと一緒だ」と言うのかもしれませんが、それは違います。

 現在の日本において「朝鮮人」という言葉は、在日朝鮮人という言葉と深く結びつく言葉であること、さらに朝鮮半島と日本の支配・被支配の歴史、北朝鮮との関係など、さまざまなイメージが絡みついています。記者は、こういった社会的意味合いを総合的に考えて、無自覚に「朝鮮人」という言葉を使うべきでないと考えています。
 言葉の持つ社会性とはこういうことだと思うのです。障がい者に対して「障がい者!」と言う人はまずいないと思いますが、それはなぜなのでしょうか。事実を事実として伝えるという意味では、アメリカ人に「アメリカ人」と言うことと同じにみえて、じつは、数ある事実の中から「障害の有無」という事実を恣意的に取り出している点で「同じ」ではないのです。

 〈匿名〉氏はご意見のなかで、記者が独自の考えでもって社会事象を分析することを「言論弾圧」だと非難し、当サイト運営会社を「(記事の)危険性を精査できずに掲載する貴社は哀れ」と指弾しています。

 記者は、弾圧ではなく問題提起だと考えています。また、こういった”アンタッチャブル”なテーマに対して、自由に発言の機会を提供している弊社の存在を誇りに思うところです。

【小山田 浩介】

 

 

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