2024年11月05日( 火 )

大名の不動産売却で見えるオンワードの苦境(1)

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(株)オンワードホールディングス

 (株)オンワード樫山・福岡支店不動産の西鉄への売却は、天神ビッグバン本格化を示す一方でオンワードの資産売却での利益ねん出を印象付けることになった。オンワードに象徴される老舗百貨店系アパレル企業はこのところ新興勢力の台頭に押されている。(株)オンワードホールディングスの2017年2月期決算では3期続いていた営業減益に歯止めをかけたが、不採算ブランドの整理などで減収が続く。急成長を遂げるEC事業が業績をけん引するが、かつての利益率をとりもどすにはEC事業に次ぐ収益源の確率が求められる。

投資家からの評価が低い老舗アパレル群

 百貨店系アパレルを追い詰めてきたネット通販とSPA(製造直販)。とりわけファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する(株)スタートトゥデイは、売上高763億円ながら時価総額が1兆円を超えた。オンワードHDは売上高規模ではスタートトゥデイの3倍以上ながら時価総額は8分の1に過ぎない。オンワードに限らずアパレル上位への投資家の評価は厳しい。リアル店舗を構える売上高トップ10のうちPBR(株価純資産倍率)が1倍を超えているのは(株)ファーストリテイリング、(株)しまむら、(株)アダストリア、(株)ユナイテッドアローズの4社(9月7日現在)。オンワードのような百貨店系への評価は厳しい。

 年々衣服への支出金額が減少するなか、巨大な存在感を示すファーストリテイリングについて業界関係者は「小学生からお年寄りまで同じものを着てだれも違和感を覚えない時代に入った」として消費者の価値観転換を指摘する。数少ないその他リアル店舗の成長企業も低価格を武器にしている企業が目に付く。高級ブランド市場は堅調だが、オンワードのような中価格帯への支持層は急速に減少している。
オンワードホールディングスは、海外企業のM&Aなどで連結売上高を維持してきたが、14年2月期からの3年間で37億円の減収を余儀なくされた。不採算ブランドなどの撤退を進め利益確保に努めるが、この間大幅な営業減益が続いた。それでも一定の利益を確保し続け、17年2月期にはEC部門の急成長で増益に転じ42億円の営業利益を確保した。この間資産売却や自社株買いを進めてきたが、PBRは0.7倍に留まっている。

(つづく)
【鹿島 譲二】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:保元 道宣ほか1名
所在地:東京都中央区日本橋3-10-5
設 立:1947年9月
資本金:300億7,900万円
売上高:(17/2連結)2,449億円

 
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