2024年11月05日( 火 )

大名の不動産売却で見えるオンワードの苦境(5)~「23区」とECが屋台骨支える

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(株)オンワードホールディングス

屋台骨支える主力ブランドの強さとECの浮上

 苦戦を強いられているとはいえ、いまだアパレル業界では時価総額6位、売上高で5位と健闘しているオンワード。消費者の衣類への支出金額が下落するなか、2017年2月期は減益に歯止めをかけてみせた。一定の営業利益を維持し反転の体力を蓄積できた背景に、主力ブランド「23区」の奮闘がある。17年2月期の売上高はレディースだけで271億円。他の自社ブランドが軒並み売り上げを落とすなか3億7,000万円売上高を伸ばした。業界関係者は「老舗ながらいまだに売れ続けている優良ブランド。中国、台湾など外国人からの人気も上がっている」と舌を巻く。「23区」はメンズも51億円を売り上げており、レディースと売り上げを合わせると、中堅メーカーに匹敵する規模の売り上げを単一ブランドで稼ぎ出している。

 また、同社を脅かしてきた他社EC業態の台頭だが、ここへ来て同社のEC分野が大きく伸び、利益回復に寄与している。赤字ブランド・店舗の整理でリアル店舗の売上高を10%落としたが、EC分野での売り上げは26%増収の150億円を売り上げた。同社は自社通販サイト「オンワードクローゼット」を15年8月に全面リニューアル。商品の検索や比較機能を強化しただけでなく、商品の在庫表示をリアル店舗と連動させた。代金後払いや電話で相談できるコンシェルジュサービスを導入し、ネットが苦手な人へも対応した。今年4月には同サイトに宅配クリーニングと無料保管サービスを追加した。さらにこの8月からは中古品の取り扱いも開始した。大手小売り業者ですらリアル店舗とのギャップに苦しむなか、立て続けに策を打ち出している。昨年4月にはEC専業ブランドを展開する「ティアラクラッセ」を買収。EC分野でもM&Aを駆使して業容を拡大している。大量の在庫を流すルートとしても、セールや催事など、規模に関わらず常時人を張り付けておかねばならないリアルイベントほど、人手=コストのかからないECの活用が有効になってきている。

(つづく)
【鹿島 譲二】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:保元 道宣ほか1名
所在地:東京都中央区日本橋3-10-5
設 立:1947年9月
資本金:300億7,900万円
売上高:(17/2連結)2,449億円

 

 
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