「コリア核戦力」の容認に「専守防衛」の日本はどう対処するのか?(前)
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日清、日露、朝鮮戦争…。戦後日本の平和は再び、朝鮮半島から崩されようとしている。「戦史」「コリア」「核戦力」…。国難というべき事態だが、大方の戦後日本人がいずれも不得手である。そこから誤判が生まれる。空隙を攻められ狼狽している実態が、新聞やネット記事からもうかがえる。21世紀の正念場はこれからだ。次回総選挙のテーマは、実はこれであるに違いない。
戦後最大の国難・北朝鮮核
毎日新聞の硬派コラム「風知草」(9月18日)は、軍事専門家の見立てを引用して、コリアの核を容認する時代の到来に、刃を突きつけた。ただし専門家の分析には、1カ所間違いがある。韓国の左翼政権は、戦術核の韓国再配置は認めない。「北朝鮮核戦力」というより「コリア核戦力」として、長期的に問題設定すべきだ。
韓国の左派政権は北に取り込まれていると言っていい。米国の出方は確定していない。中国とソ連は及び腰というよりも、基本的には傍観姿勢を崩さない。日本はどうすべきなのか?戦後の智力を傾注した国策作りが必要な局面になってきた。
北朝鮮の第6回核実験、日本上空を越えたミサイル実験と、金正恩は予想以上に急テンポでカードを切ってきた。日本の朝鮮専門家、軍事専門家の「鼎の軽重」が問われるところだが、水準以上の分析をしてみせた専門家は、数が限られるようである。ここでは、まともな議論を展開している3人を取り上げて紹介したい。
最初は、韓国・中央日報の軍事安保研究所長を務めるキム・ミンソク所長だ。彼は8月末、北朝鮮の行動を「これは始まりにすぎない」と予測し、的中させた。「北朝鮮はこれから数回、ICBMの発射実験をし、核実験を行う可能性が高い。トランプ大統領は重大な決断を促される」との見立てを語っていたのだ。
たかが韓国紙の研究所長と、嘗めてはいけない。彼は韓国国防研究員の先任研究員だった人物だ。韓国国防省のスポークスマンも5年間務めたことがある。文春オンラインから彼の予測(8月末時点)を小見出しだけを拾うと、こうなる。
「来年初頭までにICBMが完成」「核実験も年内に」「中国が北朝鮮への石油供給を止めるかがカギ」「トランプは先制攻撃を選択せざる得なくなる」「日本・韓国は報復される」。
とくに、トランプの先制攻撃は不可避であるとの予測が波紋を呼んだ。彼のロジックは明快である。北朝鮮は核兵器の開発をいかなる事態になっても止めることはない、という冷徹な見方が根底にあるからだ。
北朝鮮はなぜ核実験を続けるのか。答えは簡単だ。核兵器で韓国を威嚇し、日本を脅迫し、米国を孤立させたいからだ。我々は土壇場にきた「弱者の恐喝」を我々は見せつけられている。北朝鮮はまことに巧妙に世界を騙してきた。朝鮮半島非核化、6者協議…云々。すべては時間稼ぎだったのだ。
北朝鮮と米国の攻防を「ヤクザの戦争」に見立てた論評も参考になる。「現代メディア」というネット媒体に載った。「猫組長」というふざけたペンネームだが、言っていることは至極まともだ。
彼は米国も北朝鮮もヤクザ国家とみなす。今は北朝鮮ヤクザが、盛んに米国という巨大な組織暴力団を挑発している時期だ。怖いのは米国ヤクザが沈黙し始めたときだ、と彼は言う。巨大ヤクザが戦闘に打って出るからだ。
ヤクザ間の戦争で、一番怖いのは、思わぬ伏兵が登場する時だ。九州の暴力団抗争でもそうだった。思わぬ銃の一発が、組をあげた抗争に発展した。第一次世界大戦が誰もが予測しないかたちで勃発した事態を思い出してもいいだろう。
(つづく)
<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)を歴任。国民大学、檀国大学(ソウル)特別研究員。日本記者クラブ会員。
メールアドレス:simokawa@cba.att.ne.jp関連キーワード
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