どうなる?久留米・欠陥マンション裁判(4・終)~専門家インタビュー
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福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花畑西」の構造・施工の欠陥を巡り、設計事務所と施工業者(鹿島建設)に損害賠償を求めた裁判は、まもなく、結審を迎える見込みである。この裁判の原告区分所有者側の技術支援に関わっている建築構造の専門家・仲盛昭二氏に、緊急電話取材を行った。
――企業が、製品の不具合などの不祥事を起こした場合、すみやかに、謝罪会見や製品の回収などの措置を採り、信頼回復のために最善の努力を尽くすことが一般的だと思いますが、鹿島建設は、誠実な対応をしなかったということですか。
仲盛 このマンションの施工の不具合に関しては、鹿島建設は、開き直り、不誠実な態度に終始しています。対照的な事例が、東京の青山の億ションでの施工ミスに関する鹿島建設の対応です。こちらの億ションでは、地中梁の鉄筋を誤って切断したというミスがありましたが、鹿島建設は、すみやかに「建替え」を決定し、マンションの手付金を購入者に返還しました。相手が億ション購入層であれば誠実な対応をし、地方の一般的なマンションの区分所有者相手には、大企業ならではの開き直りで臨むという姿は浅ましいとしか言いようがありません。鹿島建設が、億ション購入層と一般的なマンション購入層では人間の価値に差があるなどと考えていないことを願うばかりです。
最近では、日産自動車や神戸製鋼所で、無資格検査やデータ改ざんといった不祥事がありましたが、どちらの企業も迅速な対応を行っています。これが、普通の企業の常識的な対応なのです。しかし、鹿島建設は、企業イメージの低下などないと驕っているのか、原告ら区分所有者に対する謝罪の姿勢が見られないばかりか、「図面通りに施工しなくて、何が悪い!」と開き直っています。巨大企業のエゴ丸出しの鹿島建設の実態を世間に知らしめるため、今回のインタビューの記事は、多くの方に読んでいただき、鹿島建設の本性を知っていただきたいと思います。
――鹿島建設の不誠実な対応の一方、いわば行司役の久留米市の対応はどうだったのでしょうか。
仲盛 久留米市は、行政の使命の一つである「市民の安全」など、全く頭にありません。区分所有者の代表たちが、提訴前に、久留米市に対して、マンションの強度に関する精査などを嘆願し、協議を重ねていたそうです。その際、久留米市は、廃盤で入手不可能な旧式の構造計算プログラムによる構造検証を区分所有者に求めるなど、無理難題を押し付けました。
本来は、行政庁であり、建築確認済証や検査済証を交付した久留米市が、構造検証を行い、建物の安全性または危険性を判断し、適切な措置を指示すべきです。区分所有者側は、久留米市の無理難題を受け、廃盤の構造計算プログラムを所有している人を見つけ、このプログラムによっても、耐震強度が50%未満(検証結果は21%)であるという構造検証結果を久留米市に提出しましたが、今度は、「建築確認時の設計者による構造検証でないから信用性が低い」などと、久留米による精査を拒み続けました。
万が一、マンションが倒壊した場合、マンションの居住者だけではなく、近隣の市民の生命にまで影響を及ぼすのですから、行政として、市民の安全を最優先に取り組むべきなのです。しかし、久留米市は、このマンションの建築確認において、単純かつ悪質な構造計算の偽装を見逃したという失点を覆い隠すために、逃げの姿勢に終始し、行政の使命を果たそうとしていません。久留米市が、異常なまでに、このマンションの耐震強度の精査から逃げているのは、先に述べた建築確認上の審査ミスを隠す目的以外にも、何か、理由があるのかもしれません。想像するに、このマンションの事例により、久留米市に審査能力が露呈すれば、過去に久留米市が建築確認に関わった全ての建物の建築確認に疑義が生じ、久留米市内の多くの建物の安全性まで疑わしくなり、全ての建物の安全性を調査・検証しなければならないという、大変な事態となることを恐れているのではないでしょうか。
たとえ、大変な事態になるとしても、久留米市民の安全を最優先に考えるならば、久留米市は、行政としての責任を果たすべきであると思います。――このマンションの耐震強度が35%と言われています。現実に、久留米地区で大地震が発生する可能性があるのか、地震が発生した場合の被害など、どう考えられますか。
仲盛 国は、耐震強度が50%未満の建物は、原則として解体するという方針です。判り易い例としては、姉歯建築士が耐震強度偽装を行ったマンションで、耐震強度が50%未満の建物に対し、行政庁から除却が命じられ、解体されました。50%未満で解体しなければならないのですから、35%という耐震強度がいかに異常であるか、おわかりいただけると思います。
大地震の発生について、国は、東南海トラフや中央構造線を震源とする地震の発生確率が高いと警鐘を鳴らしています。年内に大分県沖で巨大地震が発生すると予想されている専門家もいます。北部九州にも多くの活断層が存在し、久留米地区には、水縄断層帯という活断層があり、この断層帯を震源とする地震の発生確率は低いとされているものの、地震が発生した場合、マグニチュード7.2程度の地震が想定されています。地震は、30年後に起きるのか、1000年後に起きるのか、それとも、明日起きるのか、正確な予知ができない現状では、地震が発生するまで分からないのです。久留米市の新生マンション花畑西は、耐震強度が35%という構造検証結果が出ていますので、大地震が発生した場合には、近隣にも大きな被害を与えることになります。裁判の進行とは関係なく、何らかの安全確保の措置を早急に講じるべきであると思います。
(了)
【聞き手・文:伊藤 鉄三郎】
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