2024年12月27日( 金 )

アイランドシティを舞台に新たな疑惑(4)~Little Japan

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 福岡アイランドシティがまだ人工島と呼ばれていたころ、同地は「疑惑の島」として注目を集めたことがある。博多港開発㈱が、土地利用計画決定前にケヤキや庭石を約10億円で購入した事件では11名が逮捕され、アイランドシティのイメージは地に墜ちた。そのアイランドシティでいま、土地活用をめぐる新たな疑惑が浮上している。いわくつきの人物が事業者に決定しただけでなく、事業計画についても実現性の乏しさが指摘されている。

2枚の建設計画書

 取材を進めるうちに、取材班は2枚の「ホテル計画概要書」を入手した。1枚は公募段階でハーツ社陣営のSPCが福岡市に提出したもの(1)、もう1枚は「開発プラン」と題されたプレゼン資料(2)だ。建設予定場所の地番やホテルに「日本体験」施設が併設される計画などをみれば、(2)は明らかにハーツ社陣営SPCが建設を予定しているホテルの計画だ。しかし、ホテルの建つ場所、さらに(1)で地上14階建とされているものが(2)では異なる階層建になっているなど、両計画書には大きな相違がある。どの計画書が先につくられたものかは不明だが、取材班が入手した経緯から、(2)が後につくられた可能性が高いとみられる。

 福岡市によれば、公募で事業者が決まった後に計画を変更することは可能だというが、計画の変更について随時報告を求めているわけではなく、「完成形」になってからの報告で済むという。しかし、公募で落選した業者は、この言い分に納得するだろうか。要するに、実現は未知数だが福岡市受けする計画をぶちあげておいて、事業者の権利を獲得した後に別の計画を実行することが可能だというのだ。福岡市の担当者は「もちろん、公募の際の条件や理念などを満たしていることが必要になる」とするが、動き出した計画にはさまざまな利害関係が絡みつくため、行政が新計画にあえて「NO」を出すとは思えず、かたちだけの審査になることは見えている。

 複数の計画書が混在しながら、迷走しているようにもみえるホテル計画。冒頭述べたように、ハーツ社などがホテルとアミューズメント施設を建てる計画を進めている場所にはまだ、ススキが生い茂っている。19年6月までにホテルをオープンしなければ立地交付金30億円は支払われないが、11月末段階で建設を担当するゼネコンすら決まっていなかったという。実際、公募段階に提出された資料には、今年8月下旬から工事に入ることが明記されているにもかかわらず、市の担当者は、「(ホテルの建設計画は)ほぼ予定通り。年明けに着工するのでは」と語る。はたしてその見通しは正しいのか。

 「かなり難しいでしょう。どのような内装・デザインにするかということにも左右はされますが、14階建てのホテルとアミューズメント施設をつくるのに、現段階で着工すらしていないのは常識では考えにくい」。
 そう語るのは、国内大手ホテルチェーンの幹部として、多数のホテル建設に関わってきたS氏。「通常であれば1カ月につき1階」のペースでつくることができると話すが、もし来年1月に着工がスタートしたとしても、19年の2~3月までかかる計算だ。ホテルの「売り」とする予定のアミューズメント施設の建設も同時に進めることを考えれば、1月に着工した場合でも立地交付金の支給期限ギリギリまで建設がずれ込む可能性が高い。

 ホテル機能そのものに注目するのは、大手ホテルの幹部として経営中枢を担ってきたY氏だ。「ホテルって、宿泊だけに限定してしまえば、いくらでも利益が出るんです。でも、宴会場やレストランなどを抱えた途端に利益率がぐっと下がる。しかも400室以上となれば、部屋を埋めるのはたいへんですよ。アクセスの悪いホテルは淘汰されるでしょうし、円安が弾けた瞬間にインバウンド需要は終わってしまいます」。
 計画通りに建設が進むか不透明で、もし完成したとしても売上不振で存続が危ぶまれるホテル。浚渫土で築かれた人工島の中心に、30億円の公金(立地交付金)を投入して建てられようとしているのは、そんな「疑惑の塔」だ。

(了)
【特別取材班】

※NetIB-Newsでは、本件に関する情報をお待ちしています。media@data-max.co.jpまでお寄せください。

 

 
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