積水ハウス　和田会長辞任に思う～野口孫子

　「積水ハウス中興の祖、和田会長解任」と、新聞、週刊誌、ネットでは記事が躍っています。
　しかしながらメディアは面白おかしく、興味本位で伝えているので、不詳私高齢ながら、正しい視点よりコメントしてみたい。

　積水ハウス新体制は、公式に解任ではない。本人の辞任による若返り人事だとして発表している。

　和田元会長が、役員会でのやりとりを、その場にしかわからないことを生々しくメディアに流していると思われるので、積水ハウス側は、泥仕合になることを恐れ、一切の取材を受けつけていない。
　和田解任の報は、積水ハウス社員、OB、取引関係者には朗報として受け止められた。
　和田体制の鉄壁の守りをやっと崩してくれたという思いが強いと、筆者を含め安堵する人たちが多いと思われる。

　和田氏の子飼いと目され、社長への抜擢、重要ポストへと引き立てられた現取締役たちは、その恩義をあだで返す行為には忸怩たる思いだったろうと推察する。
　しかしそれ以上に、和田氏のワンマンぶりが老害を越えて目に余ることが多かったため、やむにやまれず正義を振りかざし、解任動議をチラつかせ、和田氏本人に辞任やむなしと言わしめたのでしょう。

　もう10年以上も前から和田氏のワンマンぶりはひどく、取締役、社員から意見をいう雰囲気もなくなり、ますます中央集権化が進んでいたようです。
　メディアがいうような権力闘争とか野心から今回のことが決行されたものでもなく、積水ハウスの将来のあり方、社員、家族、取引先関係者を思い、「もう限界」として危機感を募らされたことで行われたものでしょう。

　従って、メディアがいう「ガバナンスがない」ということではありません。
　和田氏自身、自ら積水ハウスの中興の祖と名乗っているように思えるが、歴史をたどると、和田社長就任時（1998年）は積水ハウスは業界トップの座に20年以上君臨している会社を引き継いだのです。ところが、就任して4年経つと、ついにダイワハウスにトップの座を譲ることになった。
　業界トップというのは、名実ともに社会、財界、メディアなどで会社の品格、評判などのたしかな名誉を受けるものです。業界2位に甘んじた時点で、経営者として失格と言わざるを得ない。そのころ、前会長奥井氏はいさぎよく責任を取り、会長の座から退いた。そのころから大和ハウスにもう追いつくこともないにもかかわらず、和田氏のワンマン体制は確立していったのです。

　今年和田氏は社長、会長に就任して20年を迎えていた。経営実態は

積水ハウス　18/1（見込）　売上高2兆1,440億円
大和ハウス　18/3（見込）　売上高3兆7,500億円

　ほぼ倍近く、離れてしまいました。苦しまぎれに「我が社は住宅部門ではトップ」と言っているが、むなしい言葉に聞こえる。これでは競争相手でも何でもない。
　この状況をつくり出しながら、何が中興の祖といえるのだろうか。
　中興の祖とは危機的状況の会社を引き継ぎ、その危機から回復させ、政権の安定化、意地に多大な功績があった人のことをいう。まったく当てはまらない。
　むしろ、こうまで伝統ある積水ハウスを貶めたことを深く反省してほしい。
　権力をとった瞬間から、組織は腐り始めるといわれている。20年も続けば、ブレーキ役も機能せず、ほころびがあちこちに出ていたはず。和田氏の年俸は2014年に1億4,000万。もう4年も続いている。超一流企業と同レベルです。
　これは社員に還元されているのか。積水ハウスは社員を大事にする会社ではなかったのか、疑いをもつ。テレビCMも、2月から少なくなりました。1月までは、「家に帰ればセキスイハウス」と、毎日どこかで流されていました。
　20年の垢がたまっているはず。新体制で、不明瞭な海外事業、CMなどいろいろなところからメスを入れ、時間はかかってもやらねばなりません。

　老人世代の、高度成長期の成功体験はまったく役に立ちません。時代は様変わりしている。
　新しい、若い社長の登場で、今こそ新しい視点、若者の視点から経営を立て直していただきたい。

　当面は本業の住宅に特化して、最高品質と技術の提供で、人口減少にともなう住宅需要減少のなか、シェア拡大を図りながらの経営方針になるのではないかと思う。
　積水ハウスは人材豊富です。その人材と新規事業の提案、育成を続け、新しいもう1つの事業の柱を見つけていただきたい。積水ハウスには企業文化に「進取」の気持ちが残っているはずです。積水ハウスの企業理念、「人間愛」をぜひ実践してほしい。

　社員も取引先もお客さまも「宝」であるという企業文化に磨きをかけてほしいと願うだけです。

　ますますのご発展を祈ります。

【野口　孫子】