2024年11月24日( 日 )

中洲のラーメンは黒い!進化を続けるホウテン食堂

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 福岡・博多でラーメンといえば、白濁スープのとんこつが定番。しかし、西日本一の歓楽街・中洲でラーメンといえば、真っ黒なスープが定番であることはご存知だろうか。中洲では戦後から60年以上の間、ラーメンといえばしょうゆベースの「中華ソバ」。今回紹介する「ホウテン食堂 奉天本家」はしょうゆラーメンの売上で福岡ナンバー1の店である。時代とともにニーズが多様化しているなか、創業から60年を超えたのれんを受け継ぐ同店の取り組みにスポットをあてた。

良い味を遺したい

ホウテン食堂 奉天本家

 西日本一の歓楽街といわれる中洲のまちを長年、食で支えてきた中華ソバ屋「奉天」。博多でラーメンといえば白濁の豚骨スープを多くの人が連想するだろう。ただし、豚骨ラーメンのルーツは、大陸由来の中華ソバだったといわれており、「奉天」では「中華ソバ」をつくっていた。

 屋号は、中国東北部にあった満州国の都市・奉天市(現在の瀋陽市)に由来する。同地で中華ソバのつくり方を学んだ創業者が中洲で開業。日本が戦後復興から高度成長期へ移り始めた1954(昭和29)年にオープンしたといわれている。以来、中洲を一大繁華街へと成長させた人々のエネルギー源としてまちの発展と繁栄に貢献。多くの中洲っ子から親しまれてきた。

 しかし、60年以上、のれんを守り続けてきた創業者が高齢となり、閉店を迎えることになった。この時、「奉天」の屋号を残したいと考えた現経営者が、さまざまな飲食業界で腕を磨いてきた仲間たちを集い、継承。そして2012年11月、「ホウテン食堂 奉天本家」(以下「ホウテン食堂」)としてオープンした。

昼と夜で別のまち

 今年、オープンから6年目を迎えた「ホウテン食堂」。伝統の味を受け継いだとはいえ、決して楽な道程ではなかった。店があるのは、メインストリートである中洲大通り沿い。ランドマークとなっている大型ビジョンが付いた第5ラインビルの1階である。中洲で最も人通りが多い通り沿いということで一見、好立地のように思えるが、そうではない。ほとんどの店が夜営業という歓楽街の特性上、決して飲食店が楽に商売できる所ではないのだ。

 いまの中洲は、昼と夜でまったく性格が異なる。昼間は人通りがほとんどなく、人が増え始めるのは午後7時ごろ。多くの飲み屋は、午後8時オープンの午前1時閉店。つまり、1日のうちでだいたい5時間前後が稼ぎ時となる。

 加えて、中洲へのニーズも多様化してきた。若年世代は、スナックやクラブ、ラウンジといった接客がメインの飲み屋にはあまり足を向けなくなる一方、中洲の繁栄を支えてきた世代は高齢化。インバウンドも含めて交流人口は増加しているが、旅の醍醐味の1つはグルメ。主に「飲む前の腹ごしらえ」や「飲んだ後のシメの一杯」が望まれていた時代に比べると、求められるニーズは幅広いものになっている。

味のレパートリーを充実

温泉地熱で蒸し上げた中洲ちまき

 このようななか、「ホウテン食堂」では伝統の味を守りつつ、メニューや営業スタイルに幅をもたせる改革に取り組んだ。

 まずは居酒屋メニューの充実だ。持ち帰りもできる博多名物の「鉄鍋餃子」を始め、低温調理で8時間やわらかく煮込んだ「豚肩ロース」、看板メニューの1つ「奉天黒炒飯」、昭和テイストの「昔ながらのハムカツ」、辛さがやみつきになる「激辛コンニャク鉄板」など、個性的な料理をそろえる。

 今年2月1日からは、新メニューとして「中洲ちまき」の販売を開始。幻の古代米といわれる緑米を使用し、岳の湯温泉(熊本県小国町)の温泉地熱で蒸し上げた、手づくり無添加のちまきは、蒸気の力でしみ込んだ旨みが口のなかでじんわりと広がる。楽しんだ後の幸せのおすそ分けにはうってつけの中洲土産として評判だ。

 もちろん、中華ソバ屋の主役メニューであるラーメンへのこだわりも深い。「中華ソバ」(通称:中洲ブラック)を始めとする奉天名物7品は、「博多もつニラソバ」「奉天激辛麺」「中洲とんこつ」「昭和のちゃんぽん」「博多皿うどん」「博多黒つけソバ」。それぞれスープに合わせた種類が異なる麺を使用している。一度では味わいつくせない魅力があふれている。アルコールドリンクでも、メーカーの協力のもと、スタッフ全員が生ビールやハイボールの注ぎ方の研修を受けて技術を習得するなど妥協を許さない。

奉天黒炒飯

中洲ブラック(中華ソバ)

伝統を守り続ける進化

 メニューの充実化とともに居酒屋機能も強化。経営を持続するため、「いかに夕方から夜早い時間に集客するか」を考え抜いた。店は、全席貸切で40~50名の宴会にも対応(年中無休)。店の奥には、20名までゆったりと座れるスペースをつくった。

 4名以上からの宴会メニューでは、しょうゆ・とんこつ・辛鍋からスープが選べる「和牛もつ鍋コース」(1人2,500円・税別)がおすすめだ。味にこだわる「ホウテン食堂」ならではのスープがおいしいもつ鍋に人気メニューがセットになった。

和牛もつ鍋コース

 迷ったら、奉天名物7品から〆の麺が選べる「奉天コース」。充実メニューで1人2,000円(税別)とお手頃。とことん味わいつくしたいなら、店長お勧めの「満喫コース」(1人3,500円・税別)。さらに、どのコースでもプラス1,500円(税別)で2時間飲み放題となる。

 創業以来の「中洲っ子の食堂」という大切な役割も忘れてはいない。午前11時30分から午後4時まではランチタイム。ラーメンにはライスをサービス。酒屋や不動産業者、ビル管理業者など、昼の中洲で働く縁の下の力持ちたちが舌鼓を打つ。

 「たくさんのお客さまに来ていただき、満足していただける店になるようスタッフ一同頑張ります」と、店長の伊東信介さん。「ホウテンといえば、やはり中華ソバ。新メニューのちまきも、ぜひ味わってください」と話す。

 メニューは月に1度、スタッフによる試食会で品評され、必要があれば更新される。時間をおいて訪れると、新しいメニューがあることに気づくことがあるはずだ。「良いものを遺したい」という志を同じくする仲間たちの熱意で存続した「奉天」ののれん。「ホウテン食堂」は良き伝統を守りながら進化を続けている。

【長丘 萬月】

<SHOP INFORMATION>
ホウテン食堂 奉天本家
所在地:福岡市博多区中洲2-6-12
営業時間:月~木 午前11時30分~午前3時
       金・土 午前11時30分~午前4時
定休日:日曜日
TEL:092-263-8863
URL:http://www.houten-hakata.com/

 

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