乳がん診断の革命(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
年齢の増加とともにがんの罹患率が高くなるということは研究で明らかになっている。人類はこれまで経験したことがない高齢化社会を迎えつつある。それは、従来以上に人間が、がんにかかる確率が増大することを意味している。
がんはほかの病気と比べ、本人だけでなく、家族など周りの人にも大きな影響をおよぼす。家族ががんになると、精神的な苦痛はいうまでもなく、経済的な苦痛まで味わってしまう。そこで、世界各国ではがんを早期発見し、予防する診断方法などについて盛んに研究を行っている。
そのなかでもとくに、血液検査でがんを発見しようとする検査方法が注目されている。この検査方法は血液中のタンパク質、遺伝子などを調べて診断をする方法である。
今までの検査方法は組織を採取して細胞を検査していたが、この方法は患者に負担をかけるだけでなく、費用も高くつく。それに比べ、血液検査は負担が少なく、コストが余りかからないので期待が集まっている。
腫瘍マーカーという言葉をご存知だろうか。
がん細胞の表面には、正常の細胞には見当たらない物質があり、それがはがれて血液中に流れ込んだりする。すなわち、健康なときには見られない物質が血液から見つかるのだ。血液を調べてその物質が見つかる、またはその物質の量が通常より増加していれば、がんにかかっていることになるわけだ。その物質はがんの種類によって異なっており、それぞれの目安となる値が決められている。このようにがんであるかどうかを見る目印となる物質や、その値のことを「腫瘍(しゅよう)マーカー」という。これらの腫瘍マーカーは、がん細胞が死んで、その細胞が分解されるときに出るタンパク質で、すでに40種類以上のマーカーが見つかっている。しかし、腫瘍マーカーの弱点は、ある程度、がんが大きくならないと発見できない点である。そういったこともあり、腫瘍マーカーが、がんの早期発見に十分、力を発揮できていないのが現状だ。
腫瘍マーカーより、もっと範囲が広いのがバイオマーカーだ。バイオマーカーは病気の変化や治療への反応をみる指標として使われている。バイオマーカーは新薬の開発には必ず必要になる。バイオマーカーは医療現場で、がんが転移しているかどうかを知る目安としても使われている。それだけでなく、バイオマーカーは個人の治療方針を決める際の検査として欠かせないものになってきている。バイオマーカーのなかにおける腫瘍マーカーの市場規模は約3割であり、最も成長が著しい。
今回はがんの中でも乳がんに絞って話を進めていく。乳がんは世界的に患者が増加しているし、女性のがん発生率では1位である。とくに、中国の乳がん発生率は20年にはアメリカを追い抜くほどの勢いである。乳がんは進行が早く、数カ月前に検査を受けた時には何の兆候もなかったのに、数カ月後の検査で乳がんと宣告されることも珍しくはない。
(つづく)
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