ソフトバンクがアローラ元副社長の退任を巡り特別調査委員会(後)
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米ウォールストリート・ジャーナルの告発
「アローラ氏解任要求の首謀者は誰だ ソフトバンクが調査開始」
米ウォールストリート・ジャーナル電子版(3月26日付)に刺激的な見出しが躍った。〈ソフトバンクグループの取締役会は、取締役2人の解任を求めた株主の動きの首謀者を探し出すため調査を始めた。この動きが社内の人物と連携したものか、どうか突き止めようとしている。事情を知る複数の関係者が明らかにした。
孫正義最高経営責任者(CEO)の後任とかつて目されていたニケシュ・アローラ氏と、最高財務責任者(CSO)を現在務めるアロック・サーマ氏を解任に追い込む動きが2015~17年に見られた。〉〈アローラ、サーマ両氏はいずれも不正行為がなかったとしており、自らが被害者だとの認識を示している。関係者らの話では、イタリア人のプライベートエクイティ(PE)投資家、アレッサンドロ・ベネデッティ氏が株主の動きで中心的な役割を果していた。同氏は周囲に対し、ソフトバンク社内のある人物のために動いていると語ったことがあるという。〉
ベネデッティ氏や株主の動きについて、ウォールストリート・ジャーナルからの質問を受けた直後の2月に、ソフトバンクグループの取締役会は特別委員会を設置した。
ウォールストリート・ジャーナルの告発を受けて、アローラ氏の追い落しを仕掛けた社内の首謀者探しに乗り出したのである。本社の英国移転計画に国内派が猛反発
ソフトバンクに入社したニケシュ・アローラ氏は、米シリコンバレーのオフイスを拠点に、Googleや米投資銀行から40~50人をスカウトし「チーム・ニケシュ」を作った。整理すべきグループ企業と、新たに買収すべき企業をリストアップ。こうして短期間に数千億円の買収を成功させ、同時にいくつかのグループ企業を整理売却した。
アローラ氏は孫氏の投資手法について「趣味的だ」と批判。孫氏肝いりの中国の電子商取引(EC)最大手、アリババグループや、孫氏の実弟が創業したスマホゲームのガンホー・オンライン・エンターテイメント、さらにフィンランドのゲーム子会社の株式売却を主導し2兆円を現金化した。孫氏の聖域に手を突っ込んだ。
15年の後半になると、国内派と「チーム・ニケシュ」の不協和音が外部に漏れるようになった。決定的な対立はソフトバンクグループ(SBG)の英国への移転計画だ。
朝日新聞(15年12月26日号)は「ソフトバンク、英移転を一時検討 節税・投資にメリット」と報じた。〈英国が候補に浮上したのは、節税メリットが大きいためだ。国と地方を合せた法人実効税率は、日本の32.11%(2016年度から29.97%)に対して、英国は20%と低い。〉
グローバルでビジネスをやるからには、税金の安いところに本社を移したほうがメリットは大きいというわけだ。これに国内派は猛反発。日本から本社を移すとは何事だ。アローラ氏に経営を任せていたら、ソフトバンクは解体されてしまう。
国内派はアローラ氏の追い落としを実行に移す。株主を通して法律事務所や証券取引委員会に告発した。その首謀者は誰か。これが特別調査委員会の調査の目的だ。
アローラ氏の退任をめぐる「チーム・ニケシュ」と国内派のいざこざを追求していけば、アローラ氏の退任の闇に触れざるを得ない。アローラ氏の退任に至る経緯は、最も不可解で謎に包まれている部分だ。孫正義氏のカリスマ性を傷つけることになりかねない暗部に、調査報告書は踏み込むだろうか。かなり懐疑的だ。(了)
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