カンボジア地雷撤去キャンペーン、20周年を迎えて(1)
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(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーン理事長
大谷 賢二 氏5月12日、福岡市の都久志会館で「一般財団法人カンボジア地雷撤去キャンペーン20周年記念講演・祝賀会」が開催された。NetIB-Newsでは、大谷賢二理事長の創立20周年を迎えてのあいさつを複数回に分けて掲載する。
1998年5月にカンボジアの地雷撤去、被害者救済を目指し「カンボジア地雷撤去キャンペーン」(CMC)を立ち上げて丸20年が経ちました。この20年間、とくにここ7~8年のカンボジアの変化には目を見張るものがあります。
私が個人的に関わり始めた22年前からの10年間はほとんど何も変化のない、道路はガタガタ、橋は狭く木製で大型トラックは通れない。電気も通信手段もなく、無線機のアンテナを高くして近距離の連絡がやっと取れるといった状況が続きました。
首都プノンペンでさえ信号は少なく、車は中古のカムリか4駆のランドクルーザ――。雨季には道路は水没し、どこまでが道路かわからない。蛇口はあっても茶色く濁った臭い水しか出ずにとても飲めたものではなかった。
ところが、この数年のカンボジアはプノンペンを中心に海外からの投資が急激に増え、高層ビル群が立ち並び、道路整備の前に車が増えたため、首都圏の主要道路、空港線などはまったく時間が読めないほどの渋滞ぶりです。
一方では、これはカンボジア全体の均衡的発展状況を表しているのではなく、首都圏1極集中による富の偏在や、権力の集中に対する国民の不満をも内包しています。一言でいえば、プノンペンで生活する人とタイ国境付近の地雷原で暮らす人の生活格差は、日本人とカンボジア人の平均の格差より大きいものがあります。
もとはといえば、学生時代のベトナム反戦運動に端を発し、好奇心旺盛で何事も自分の目で確認したいという気持ちから5大陸の多くの国々を歩く中でカンボジアの地雷被害者の悲惨な現実に直面したのがきっかけでした。当時は日本という(その頃世界第2の)経済大国の中で何不自由なく豊かさを享受していた私たちに対し、同じ地球上にはその日の食事もなく、貧困と疫病、戦争や紛争、「先進国」からの多重債務に苦しむ人々が12億人以上もいたという矛盾を強く感じたものでした。現在も、シリアやアフガニスタン、パレスチナ、南スーダン、ミャンマー(ロヒンギャ)などでは毎日多くの女性や子ども、罪のない人々が殺され続けています。
それら現在進行中の問題の1つが「悪魔の兵器」対人地雷による被害でした。
思えば、あの時の衝撃は忘れられません。初めてカンボジアを訪れた時の手や足、そして目の見えない人たちの多かったこと…。その原因が地雷であることを知り、その憤りと悲しみをどのようなかたちにしていくか模索を続けました。ピースボートで、CMAC(カンボジア政府の地雷除去組織、カンボジア・マイン・アクション・センター)やカンボジア・トラスト(イギリスの義足提供NGO)を訪れ、JHP(学校をつくる会)の小山内美江子さんと学校建設現場やステンミェンチャイのゴミ山を視察して考えた結果がCMCの結成につながりました。その時、私か確信したのは地雷問題に特化した組織の立ち上げの必要性でした。
私が初めて現地を訪れた1996年がまさしくカンボジアに於ける地雷被害がピークで4,320人の死傷者を数え(カンボジア地雷対策・被害者支援庁)それが2016年に83人、2017年には58人に激減しています。つまり20年間で50分の1、22年間では75分の1にまで減ったことになります。とはいえ2016年時点でそれまでの被害者は、わかっているだけで64,662人(内死者19,748人)でありカンボジアが最大の地雷被害国である事には変わりはありません。
そのようなカンボジアの実情の変遷によりCMCの役割も少しずつ変化してまいりました。
活動開始当初は、地雷撤去支援、被害者支援という事で、現地事務所もない時は全国で集めた募金支援金を地雷撤去団体や、義足センター、病院に届けることが中心でした。しかし、地雷撤去後の地雷原に生活する人たちの厳しい現状を知るにつけ、地雷問題は地雷撤去だけで解決できるものではないことを痛感しました。そこで、極貧の村への農業支援や教育支援、また被害者の心のケアや職業訓練の必要性を認識し、それらの改善に向けた取り組みに重点をシフトしていきました。
カンボジアでの地雷被害が減少する一方で、世界では各地でアメリカ・中国・ロシアという新しい枠組みと、紛争地域におけるISのようなテロ組織の台頭による紛争多発により、逆に地雷被害は増えており、毎日何人もの罪のない子どもや女性を含む人々が手足を奪われ続けています。地雷禁止世界キャンペーン(ICBL)のランドマインモニターによると、2016年のデータでは、世界61の国と地域で8,605人が死傷しています。しかも許せないのは子どもの被害者は過去最高に上り、全被害者に占める一般人・非戦闘員の被害者がその78%を占めているという事です。
(つづく)
▼当日の講演の様子▼
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