2024年11月29日( 金 )

有機ELパネル市場にも中国の脅威(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 筆者は2001年頃、有機ELパネルについての話を日本で初めて聞いた。当時日本の家電メーカーはこの技術の有望性に目をつけ、有機ELの技術開発に力を入れていた。しかし、その後日本企業は有機ELの技術開発には成功したが、莫大な設備投資の実行に躊躇し、有機ELの商業化には踏み切れずにいた。ところがサムスンディスプレイは有機ELの研究開発に邁進し、2007年世界初の有機ELパネルの大量生産に成功する。今から約10年前の話である。
 既存の液晶ディスプレイ(LCD)は、別の光源を必要としている反面、有機ELはみずから発光するため、別の光源を必要としない。このような特徴を備えた有機ELは、応答速度が速く、色の再現性がよく、薄くて軽いし、コントラスト比が高く、実にすばらしいディスプレイ技術だった。
 何よりも、有機ELはフレキシブルにも対応でき、今後いろいろなアプリケーションへの活用も予想されている。しかし、有機ELが普及するまでには、その後さらに数年の歳月が必要だった。

 有機ELが最初に普及した分野は携帯電話である。世界で初めて有機ELの大量生産に成功したサムスンは、グループ会社の携帯電話を中心に有機ELのパネルを導入した。サムスンはディスプレイの特徴をうまく活用し、携帯電話の世界シェアを伸ばし、世界トップシェアを成し遂げた。
 10年前、有機ELディスプレイの携帯電話シェアは1%に過ぎなかったが、2017年には40%を上回るほど、有機ELは携帯電話分野で成長した。もちろんサムスンは携帯電話などの中小型ディスプレイ市場で95%ほどの市場シェアを占め、圧倒的な強さを誇っていた。ライバルであるアップルでさえ、i-PhoneXにサムスンの有機ELディスプレイを採用するに到った。
 しかし、有機ELディスプレイはLCDに比べ、価格は2倍くらい高く、これによりi-PhoneXは高くてあまり売れなくなった。この結果を受け、携帯電話に有機ELの採用をやめて、LCDに戻す携帯電話会社も出た。ディスプレイ会社はこの影響を受け、計画していた有機ELの設備投資が見直された。しかし、スマホ市場の競争が激しくなっているばかりか、技術革新もほぼ限界にきている現在の状況では、何か他社と差別化できる技術が切実に必要であることも事実である。それで注目が集まっているのが有機ELのフレキシブルディスプレイである。
 一方、LCD分野では、すでに中国企業に追い越されて競争力を失った韓国企業はディスプレイの主力を有機ELに切り替えて、市場で生き残りをかけている。これは韓国企業が有機ELにこだわる別の理由でもある。サムスンディスプレイは5世代LCD工場であるL6を稼動中止する計画だし、7世代のLCD工場であるL7-1もLCDから有機ELに設備の入れ替えを計画している。

(つづく)

 
(後)

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