2024年11月22日( 金 )

【豊洲市場訴訟】被告・東京都の反論への反論(4)

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 10月11日に東京都中央卸売市場の移転・開場を予定している豊洲市場。しかし、移転元の築地市場の仲卸業者らが6月29日、東京都を相手取り、同市場・水産仲卸売場棟の建築基準法令違反の是正(除却)を求めて提訴。7月9日、この建物の仮の使用禁止の義務付けを要請する申立が行われた。ついに訴訟に発展した市場移転問題。被告・東京都の反論について、この問題の争点である建築基準法令違反を指摘した(協)建築構造調査機構の仲盛昭二代表理事に解説を依頼した。

 ――東京都は、豊洲市場・水産仲卸売場棟の1階柱脚は、日本建築センターの評定を受けた製品であり、技術基準解説書が定めたDsを用いる必要はないと主張している。(前回からのつづき)

▲柱脚説明図
 (クリックで拡大)

 仲盛昭二代表理事 参考までに、右図で埋込形柱脚と非埋込形柱脚の違いを説明します。豊洲市場・水産仲卸売場棟の場合、左側の非埋込形柱脚に該当します。鉄骨柱下部のベースプレートより下には鉄骨が存在しない鉄筋コンクリート造なので、1階のDsは、鉄筋コンクリート造のDsとし、鉄骨鉄筋コンクリート造の場合に適用されるDsの低減はできないことが、技術基準解説書に定められているのです。

 次の図は「ハイベースNEO」 という製品のカタログからの転載です。(下線は当方で記入)

 東京都や設計者である日建設計が主張している「1階Dsの割増不要」は、このカタログなどに基づいた主張です。しかし、これは純鉄骨用の製品であり、先に述べたように、水産仲卸売場棟に使用されたSRC用ハイベースのカタログには、Dsに関する記載はありません。SRC造である水産仲卸売場棟には「Dsの割増の要・不要」という純鉄骨造における項目は関係ないのです。東京都や設計者の日建設計は、もっともらしい説明をしたつもりかもしれませんが、SRC造の建物についての議論に、鉄骨造の話を当てはめて説明することは的外れです。

 仮に、鉄骨造の建物であったとしても、「1階の保有水平耐力比が1.1 倍以上であることを確認すること」と記載されています。乙6号証によれば本件建物の保有水平耐力比は「1.25」となっており、1階のDs は「0.3」となっています。1階のDs を鉄筋コンクリート造のDs とすれば、Ds は0.35 となり、「1.25 ×(0.3 / 0.35)= 1.07」で、カタログに記載されている「保有水平耐力比が1.1 倍以上」を下回っています。また、本件建物のようなH形鋼柱の場合は「Dsの割増が必要」と記載されています。

 上記の「1.07」という保有水平耐力比は、本件建物に要求された保有水平耐力比「1.25」に対し17%の耐力不足となっています。公設市場に求められる保有水平耐力比を満足していない水産仲卸売場棟を公設市場として使用することは、法的に認められないのです。

▲ハイベース工法の特長
 (クリックで拡大)

 東京都は、自らの主張を正当化するために、実際の構造種別(鉄骨鉄筋コンクリート造)とは異なる鉄骨造の資料を使用するなど、裁判所を混同させること、論点をずらすことを目的としています。これは、PTにおいて日建設計が提出した資料が虚偽の記載がある資料だったことと同様であり、設計ミスを隠ぺいしたい日建設計と、審査ミスを隠ぺいしたい東京都の目的が一致した結果の産物である虚偽の資料です。私たちは、PTにおける日建設計の説明や虚偽の資料を見て、彼らがごまかしていることを認識していました。論点ずらしや裁判所の混同を目的とした証拠について反論することに意味を見出せません。こうした虚偽の資料に惑わされず、裁判官が公正な判断を下されることを期待しています。

 

(つづく)

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