2024年12月05日( 木 )

佐賀県のみやき町を見習おう

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 「ふるさと納税」の返礼品に電化製品などの高額な商品を提供し寄付を集める自治体があることを問題視した野田聖子前総務相は、9月11日、そうした自治体への寄付を税優遇の対象から外す方針を示した。

 野田前総務相から名指しで批判を受けた、佐賀県みやき町の末安伸之町長に見解を聞いた。

 ――今回の野田前総務相からの指摘について。

▲末安 伸之 町長

 末安伸之町長(以下、末安町長) 野田前総務相は1年前と言っていることが違う。1年前は「返礼品は自治体にお任せするのが当然」、家電など換金性の高い返礼品については「転売目的をどうするのかは別次元の問題」「地方の首長の良識ある判断が第一義。いたずらに止めることがあってはならない」と言っていた。それにより地場産品がない自治体が元気になった。今回、名指しで指摘され戸惑っている。返礼品の見直しについては、以前から今年度中と伝えていた。すでに設備投資を行っており、雇用の問題もある。協力業者は混乱するだろう。

 ただ今回の件が、報道されたことにより世間の注目が集まり、1日で過去最高額になる約7億7,000万円の寄付金が集まった。

 ――ふるさと納税について。

 末安町長 地方自治体に今後求められるのは経営感覚。収益を上げることで新たな住民サービスを還元することが大きな目的。私たちはとくに子育て施策に力を入れており、たとえば、18歳までの医療費無料化、給食費の完全無料化、小規模保育の財源に充てたりしている。もちろん、子育て世帯だけでなく、高齢者、その他すべての住民に対しての施策に財源を充てている。それによって6年連続転入超過という結果につながっている。これだけ続いているのは県内では鳥栖市とみやき町だけ。みやき町がこれらの施策を実現できているのもふるさと納税のおかげだ。

 ――ふるさと納税の寄付者が住む地域の住民サービスが低下するという意見について。

 末安町長 税収が減っている大都市からの声は聞こえている。人材確保は地域間競争という見方ができる。地方は首都圏ら大都市に人材獲得競争で負けている。環境がどうとか嘆いてもしかたがない。
 ふるさと納税も競争。納税者の意欲を引き付ける努力が必要。誕生から成人するまで育成に地方の費用を投じた人材が大都市で稼ぐようになった。その一部をふるさと納税で還元してもらうというのは理にかなっているのでないか。現状では都会は大量の労働力で稼いでインフラなど充実している。地方では下水道も整備されていないところがあるのが実情。

 ――地場産品を取り扱ってないとの批判もあるが。

 末安町長 みやき町だけが良ければいいとはまったく考えていない。佐賀県内ではブランド力のある佐賀牛、さがびよりなど佐賀県産の同じ商品を返礼品とすることで、県内の自治体は比較的多くの寄付金が集まっている。困っている自治体とコラボするなど、いろいろな工夫をして今に至っている。今回、豊かな自治体に少しでも近づこうとした結果、批判を受けた。具体的なガイドラインが示されてないためエリアが不透明で、産地品をもっておらず困っている自治体も多い。ほかの地域から調達して地元の小売店を通したり、産地品が少ない自治体と協定を結んだりするなどの努力をしている。ただ、やり過ぎた感はある。やり過ぎはよくないから、早くガイドラインを示しルール化してほしい。

 ――多額の税収を集める秘訣は。

 末安町長 返礼品だけで集まるほどふるさと納税は甘くない。使途も重要。特別会計による使途の透明化やビジョンをもったまちづくりと情報発信。そのための有力企業とのコラボレーションなどによる高額納税者へのPRなどあらゆる手を尽くしている

 ――寄付金が何に使われているか。

 末安町長 みやき町は特別会計で透明化している。寄付がいくら入って、どこに使って、いくら残ってというのを全部「見える化」し、寄付者や住民にわかるようにしている。また、やってほしい施策については広くアイデアを募集しており、申請者の手づくり動画などをネット上で見られるようにし、投票で実施を決めている。また、議会に特別委員会を設け、住民から募ったアイデアの選定や、施策事項の変更などの協議を行っている。
町の施策である21の寄付項目に賛同した高額寄付者が多い。

 ――きちんとしたルールづくりが必要ですね。

 末安町長 同じスタートラインに戻れば、真の意味でその自治体の施策とか取り組みに共鳴・共感した人が寄付してくれる。努力する自治体にはチャンスとなる。海産物などの地場産品の線引きや返礼費用の割合が3割というチェックはどうするのか、早くガイドラインを示してほしい。


 4期目を務める末安町長。首長として、また多数の企業とコラボするなど経営者として、子どもから高齢者まですべての町民のことを第一に考える姿勢には共感するところである。ほかの自治体にとって見習うところは多いだろう。

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